中国拳法、武術、格闘技など、徒然気ままに…

太極拳ってど〜よ!?

徒然エッセイ

隣の芝生

投稿日:2009年3月20日

入門して数年の頃、龍清剛氏の『鉄砂掌―中国拳法・秘伝必殺』(1983年・日東書院刊)という本が出た。
著者を始め厳つい弟子たちが、鍛えられた肉体や凄まじい発勁写真を披露していた。
この本、残念ながら買って間もない頃、人に“借りパク”されてしまい、手元に残っていないのだけど、
「鍛えもせずに強くなろうなどという幻想を抱くな」
というようなことが辛辣に書かれてあったのが印象に残っている。
ただ、写真はにわかには信じがたく、ケレン味を感じる部分もあったのだが、だからといって一概にインチキとも言えない。
中国武術の入門書といえばどれもあまり代わり映えしなかった中、正直言ってその頃の僕らには衝撃的だった。
当時の兄弟弟子、K阪さんは、
「hideくん、アレどう思う? あんなんオレらが今やってること続けてて、オレらもできるようになるんやろか?」
と、何度か話題に出して首を捻っていた。
その頃の僕は、他派への対抗意識だけで、
「さぁ、どうでしょうね。どうせ写真やから何かトリックでもあるんでしょう」
と返していた。
しかし内心は、ああいうのが本当で、ウチでやってることなんて大したことないんじゃないか?…と不安にもなった。
もちろん、
ウチの流派で教わっていることは、それはそれで納得していたし、仮に『鉄砂掌』の内容がすべて本当でウチより高度だとしても、今のことさえあまり上手く出来ないのに高望みしてもしようがない。
僕自身は、そんじょそこいらの有段者にひけを取らない強さは身につけたかったが、超人を目指していたわけではないから、機会があれば乗り換えたいと思うほどの渇望もなかった。
…が、気にならないといえば嘘だった。

この少し前に、映画『少林寺』(1982年)も公開されていた。
主演はジェット・リー(当時は李連杰=リー・リンチェイ)で、彼のデビュー作だ。
考えてみれば僕も兄弟弟子たちも、中国拳法を志した原点はブルース・リーやジャッキー・チェンだった。
2人ともすごい体(鍛えられた体)をしている。
しかし松田隆智さんに影響を受けてからは、北派拳法、ことに内家拳は筋力を必要としないという幻想に陥り、
「ブルース・リーやジャッキー・チェンは南派拳法だから…」
と考えるようになった。
しかし、すごい体なのはジェット・リーだってそうだ。
彼は北派拳法をやっているのではなかったか…?
「筋力は要らない」「筋肉は邪魔になる」って一体…!?
そう迷い始めたときに、『鉄砂掌』だ。。
そして、
それからしばらくすると、ウチの流派でも筋力トレーニングを行うようになった。
ますます混乱。。(笑)

…まぁ、そんなこんながあるうちに、僕は、前にも書いたような事情で道場を一旦離れてしまった。
でも拳法への熱が冷めたわけではなかったので、何年かは、多少頻度は落ちても、練習は続けていた。

その後出た本では、陳孺性氏の『太極拳の科学』(1984年・愛隆堂刊)、『陳式太極拳戦闘理論』(1985年・愛隆堂刊)、近藤孝洋氏の『原説・太極拳-気功と太極拳の原点』(1988年・愛隆堂刊)などが面白く、当時の僕には参考になった。
同じく近藤孝洋氏の『極意の解明-一撃必倒のメカニズム』(1992年・愛隆堂刊)を読んだのは、発行年よりずっと後だった。
また、後で知ったのだが、このお二人は前述『鉄砂掌』龍清剛氏の門下だそうだ。
ちなみに、
龍清剛氏主催の団体は“双龍会”(正式には“双龍拳法総会”?)といい、所在が兵庫県だったせいか、この門とは幾らか縁があって、ウチの流派の長であるS先生のところにその当時習いに来ていた某さんも所属していたそうで、その人も本を出している。
また、僕の友人で過去記事に登場したT宮も、いつの間にかここで学んでいて、20代半ば頃に情報交換したことがある。

それから、陳孺性氏の2冊目の本と同じ頃、呉伯焔氏の本が出始めた。
『真法八極拳』(1985年・ベースボール・マガジン社刊)を始めとする何冊かの著書があるが、どれとどれを読んだのか、はっきりと憶えていない。
呉伯焔氏は何かと悪評が多いのだが、当時の僕は面白く読ませてもらった。
特に、松田さんが紹介する程度で濁していた打撃訣(?)の「気」「血」などについて詳しく解説しているのには驚いた。
それまでの僕にとっては謎のままだったことが少しスッキリして、その先を想像するヒントになった。
また、牛の血で青酸カリを作る方法(だったっけ?)などはマユツバな気がしたけど、髪を細かく刻んで服用させ暗殺する方法とかは、もしかしたらありそうで面白かった。
解説写真は、となると・・・。
でもそれは呉伯焔氏の本に限らない。
まぁ、どの本だったか、弟子の1人が、演武か組手を行っている写真に、
「あまりの速さに手がぶれて写っている」
というような注釈が書かれてあったのには、ちょっと電波なものを感じてしまったが…。

その後、雑誌『武術(うーしゅう)』の編集長と中傷合戦になったりした頃から、呉伯焔氏の本も『武術』も買わなくなってしまった。
事の顛末は気になっていたのだけど、個人的に色々あったし、『武術』も内容が面白くなくなっていた。
ネット上に流れている情報によると、何やら『武術』側が呉伯焔氏の経歴や武術歴を暴露して、嘘つき武術家の烙印を押してとどめを刺したような結末だそうだ。
その後の呉伯焔氏は、脳を病んだとかの噂もあるけど、真偽のほどはわからない。
最近になってお弟子さんがDVDを出しているようなので、活動を続けてらっしゃるのかも知れない。

…まぁ、とにかく。。

上記諸々の書籍が出回っていた頃、まだ知らないことが幾つも出てきて、少しばかり自分が学んでいるものに対して懐疑的になった。
写真を見ると今一つ納得できないにしても、色んなことが他の流派に伝わっていることを思うと、今の流派でもっと先のことを学べるのか、わからなくなった。
自分が今どのあたりに居るのかも。。
またその後、大陸系の老師から学ぶ人たちも増え、陳家太極拳も八極拳もめずらしくなくなっていった。
そういう時期、僕は個人的な事情で道場を離れてしまった。

中国武術を学ぶ人が増え始める中、今やってることさえうまくできなくて疑問だらけ、他派には目移りしそうになる、だからと言って写真を見ると・・・。

結局、どこまで習えるかも含めて、
「オレには使えるようになれないのかもなぁ…」
などと思った。
1人になってしまって、そういう思いはその後もしばらく続いた。。

 

以下、コメント

旧ブログからの移転にあたり、掲載当時のコメントはこの下に“引用”のかたちで付けておきます。管理人からのレスは囲みの色を分けてわかりやすくしておきます。
なお、現在はコメント機能は使用しておりません。ご意見、ご感想等はメールにてお願い致します。

この鉄砂掌の写真の真偽は別として、敵を打撃する場合、充分衝撃力を出す方法は存在すると思います。
私も或る団体で中国拳法を習いましたが、その稽古の内容を大まかに分けると

1、如何にして敵に我がパンチ、キックを当てるか、、速さと駆け引き、連続技

2、如何にして敵のパンチ・キックを躱すか
、、速さと駆け引き、連続対応

3、如何にして、強い衝撃を敵の芯に通すか
つまり強い衝撃の通し方と、その方向、目
標、敵の連続反応を封じる力の通し方、、等

と云う事で、あの鉄砂掌に載せられた写真はヒトを打撃で破壊する技術を突き詰めたならばあながち嘘とは言えないと思います。

とても私の様な凡人が及ぶ世界ではありませんが、あれに近い感触を味わった事のある者として、、、もし、私にこの感触を味あわせた指導者が更に技を磨き上げたなら、、私もあの様に吹っ飛ばされてしまうのではないかと思っています。

遥か昔、25年以上前の記憶ですが。

Posted by Shin at 2015年04月21日 00:16

この鉄砂掌の写真の真偽は別として、敵を打撃する場合、充分衝撃力を出す方法は存在すると思います。
私も或る団体で中国拳法を習いましたが、その稽古の内容を大まかに分けると

1、如何にして敵に我がパンチ、キックを当てるか、、速さと駆け引き、連続技

2、如何にして敵のパンチ・キックを躱すか
、、速さと駆け引き、連続対応

3、如何にして、強い衝撃を敵の芯に通すか
つまり強い衝撃の通し方と、その方向、目
標、敵の連続反応を封じる力の通し方、、等

と云う事で、あの鉄砂掌に載せられた写真はヒトを打撃で破壊する技術を突き詰めたならばあながち嘘とは言えないと思います。

Posted by s at 2015年04月21日 00:18

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