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太極拳ってど〜よ!?

徒然エッセイ

T宮との交流 Part3

投稿日:2009年6月18日

前項で“雷声”に触れたが、少し補足しておこう。
T宮が説明した“雷声”について、発声のタイミングを槍投げに例えたが、もっと具体的な例を思いついた。
それは女子テニスのシャラポワ選手の発声だ。
彼女はボールを打つのと同時に発声するのではなくて、打った直後に、漏れるように発声する。
実際、本人も何かのインタビューで、
「どうしても漏れてしまう」
というようなことを述べていた。
だから彼女の場合、意識的な発声ではないのだろうが、タイミングについて言えば、あの感じだろうと思う。
また、昔、松田さんが書いていた「フン」「ハ」の呼吸がある。
(※漢字を忘れてしまった。調べるのが面倒なのでカタカナにする)
これは僕の勝手な想像だが、もしかしたらこの“フン・ハ”に当てはめて考えると、ウチの流派の発声は「フン」にあたり、T宮の雷声は「ハ」にあたるのかも知れない。
そして、T宮はたぶん、意識的に用いるような説明をしていたと思うのだが、カン高い声を振り返って思うに、シャラポワのように一瞬力強く息んだ結果、“漏れてしまう”というのが自然のような気もする。

さて、続き。

T宮は発勁の練習法を教えると言って、新聞の朝刊と洗濯バサミを要求した。
新聞は、全部拡げた状態ではなくて、二つ折りのところまで拡げる。
当時で20枚分くらいの厚みだったろうか…?
確か針金のハンガーで、その両端に洗濯バサミを使って吊すようにした。
T宮は、どう構えていたかよく憶えていないが、一歩踏み込んで、八極拳の横向きになる格好で、拳で突いて見せた。
スパーン!
という小気味いい音が鳴って、新聞紙に穴が空いた。
「ええ?」
「どや。スピードと呼吸が一致せんとなかなか空かへんで!」
厚い朝刊は幾らか重みもあるが、吊っているだけなので安定しない。
そして案外固い。
例えば四隅を固定して指先で突いてみれば、意外と張りがあることが判るだろう。

とりあえず僕も彼の動作を真似てやってみたが、ことごとく失敗。
…まぁ、八極拳の型に不慣れなせいもある。
横向きになって突くというのはどうも馴染めない。
そこで、ウチの流派の弓歩で立って、形意拳の崩拳のように縦拳で突いてみたり、金鷹拳のように横拳(正拳)で突いてみたりした。
しかし毎回、
バッ!
という音がして、新聞紙が後方に揺れ動くのでなかなか穴が空かない。
「へー。難しいもんやな…」
「そやろ!」
T宮は少し得意げだ。
そしてまた、2~3回手本を見せてもらい、動きを観察した。
少し慣れてくると、何枚目かまでは小さな裂け目が出来るのだが、T宮のように貫通するところまではいかない。
T宮の動きは、彼が最初に説明したように、蓄・発の体重移動と、それに伴って波が伝わるように拳に向かって加速する感じだ。
例えばムチのように。
しかし動作の完成形はきちんと突いた格好になっている。
まずはその感じを、僕が習った型の上で行ってみようと試行した。

次に、定位置での突き。
新聞に突きが届く距離で立って、手を最初は掌のまま額の前あたりにかざす。
半眼で瞑想するようにしながら、
「前方の物を突きたいが何か障害があって突けない」
というような感じをイメージする。
例えば手を前から押さえられているような。
そのストレスをかけ続けることによって、自らに精神的な圧を加える。
それが極限に達したと思う瞬間に解放して、前方の新聞紙を突く。
但しこれは、一日にあまり何度もやってはいけないとのことだった。

実際にはもう少し細かい説明を受けて、あと站椿の際のイメージ法なども教えてもらったが、それは伏せておく。
これを参考にしたい人は、自分が習ったものの延長上で試行錯誤してみてもらいたい。

ちなみに、上記の内、似たようなことや重なることは、ウチの流派でも後に説明を受けたが、この時点ではまだ知らなくて、彼の言うことはなかなか新鮮だった。

T宮は、その某会の中では、素質を認められて、短い年数ながらもかなりのところまで教わることができたのだと言う。
そして僕にも、
「ホンマの発勁できるようになる人間は少ないから、できそうなヤツには教えようと思ってるんや」
と言っていた。
「ふーん。オレ、できそうかな?」
「うん、hideならできるようになるんとちゃうか」
僕はイマイチ実感が持てないまま、T宮が帰ってからも自分なりにその訓練を続けた。

T宮が2度目に来たときには、僕は新聞紙を貫通できるようになっていた。
ただ、これにはちょっとタネがある。
彼が拳をしっかり握っていたかどうか、また、拳頭を当てて貫通していたかどうか、などを考えて、色々と当て方を試した。
そして僕なりの工夫で貫通できるようになったので、本来のやり方に沿ったものかどうか…。。
要は、発勁の訓練をしているのであって、新聞に穴を空けることが目的では無い。
穴が空くのは一つの目安だからだ。
それでもT宮は、
「素質がある」
と言ってくれたが、僕はちょっと疑問に思っていた。
結局、これは、訓練法に過ぎなくて、実戦的な修練と言うよりは、基礎的な体の使い方であったり、呼吸法であったり、イメージトレーニングであったり…ということなのだろうと思った。

T宮はその後も1~2週間おきくらいのペースで何度か遊びに来てくれた。
別の場所で会うこともあった。
型を教えてくれようともしたのだが、僕は覚えるのが面倒で、最初のサワリ程度ですぐ断ってしまった。
まぁ、正直言えば、大架式の型には魅力を感じなかった。
体の使い方を基礎から修得するのにはいいかも知れないが、すでに何年も型をやっているのだし、このときの思いとして、今さら一からという気にはなれなくて…。

あと、この打ち方は面白いのだが、新聞貫通の要領で相手の胴体を打つには、ちょっと拳が軽いのではないかという感じもした。
しかし陳家太極拳も八極拳も、どっしりした感じだったし、この打ち方の延長上で、体重を乗せて突き込む、または押し込むような突き方を、するのかも知れない。

とにかく、彼に一から教えてもらうのでない限り、自分なりに工夫するしかない。
もちろん彼のすることが実戦的で凄いと思えれば「一から」という気になっていたかも知れないのだが、ユニークではあっても、わざわざ乗り換えたいと思うほどの凄みは感じなかった。
ただ、彼に教えてもらって参考にしたことは、その後の工夫にも幾らか繋がり、独りの時期、かなり長い間取り入れていた。
また、彼と再会しなければ、その時期、先生のところに戻ろうとしていなかったかも知れない。<結果的には一時的なものになってしまったが…。

次回は“気”について。

<< Part4へ続く >>

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