中国拳法、武術、格闘技など、徒然気ままに…

太極拳ってど〜よ!?

徒然エッセイ

長谷川穂積の脱力パンチ練習

投稿日:2009年12月21日

今、最もノリにノッているプロボクサー、長谷川穂積選手。
12月18日には10度目の防衛戦で見事勝利を果たした。
…と言いつつ、
実は録画していて、試合をまだ見ていないのだが。。(^^;ゞ
ついでに白状すると、時折ボクシングの話をするけど、ボクシングに詳しいわけでも試合をよく見ているわけでもない。
他の格闘技についても同様だ。
まーその中でも立ち技系であるK-1は、比較的見ている方だけれど…。

で、何故長谷川選手を出したのかと言うと、最近彼の特徴やユニークな練習方法がよく取り沙汰されているからだ。
少し前に買った武術雑誌『秘伝』11月号でも、松田隆智さんの「拳法の極意を求めて」という記事で、以下のように触れていた。

 現在では何と言っても世界バンタム級王者の長谷川穂積選手だ。かつて長谷川穂積選手のパンチを元世界ライト級王者の浜田剛史氏がビデオ分析していたが、浜田氏は「長谷川選手は全身をゆるめて、パンチの当たる瞬間に力を加えるが、当たる直前までゆるめているので肩が伸びてパンチ力が増加する。この打ち方は本来、黒人選手特有の打ち方で、日本人では珍しい」と言っていた。
浜田氏の説明は、まさに中国拳法の「全身鬆開(全身をリラックスさせる)」と「鬆肩(肩をゆるめて伸ばす)」によって、快足に打ち出すパンチ“冷弾勁”そのものであり、チャンスの時の長谷川選手の連打は翻子拳の「双拳の密なること雨の如く、脆快なること一掛鞭(鳴り続ける爆竹)」そのものだ。

ちなみに記事は「迎門三不顧」という招法(技法)についてのもので、敵を正面から迎えたならば三度打って顧みず(つまり三連打)を、翻子拳や八極拳などの型で解説。
まー内容的には昔から変わらないことを書き続けてらっしゃるのだけど、久々に読んでみると、心持ち具体性や現実性が増した文章になっている印象を受けた。
…あまり変わらないケド。。(^^;

ついでに、ちょっと気になったことを一つ。
何故“三発”(三連打)なのかということの説明は、ことわざや世の中の現象の基本的な数ということで説明してらっしゃるのだけど、これはマユツバに思っておいた方がいいと思う。
そんなことで三発という数を決めてどうするのだろう…。
名称の中に入っている数字や要訣の数にそういうのを当てはめるのはあるにしても、実際にどう戦うかという方法論にまでそんな理屈を持ち込むのはおかしい。
もちろん三発で倒れなければ倒れるまで打ち続ける云々も書いてあるが、それならハナから意味が無い。。
まーあまり大したことを書いてなくても、中国語の漢字による術語についつい深い哲理や神秘性を感じてしまうってところが、この世界にファンタジーな人を多く生んでしまっているわけで。。(^_^;)

いや脱線。
長谷川穂積に戻ろう。

個人的には、長谷川がチャンピオンになっても、僕はしばらく、彼をあまり認めていなかった。
長年王者に君臨していたウィラポンを破ったときは、
「えーっ!?」
と思って、すぐに納得できなかったからだ。
確かその試合、チャンネルをザッピングしていて偶然、終わりに近いあたりから見たのだが、ウィラポンが不調そうだったのと、長谷川もパッとしない感じだったのとで、長谷川が判定勝利になったものの「うそー?」と思った。
(今改めてその試合を最初から見たら、違う感想になるかも知れないが…)
ちなみに、、
ウィラポンが辰吉からチャンピオンベルトを奪ったときには、ウィラポンは噛ませ犬のような評判だったと思うが、試合前の控え室中継で彼を初めて見たときは、
「うわっ、辰吉負ける!」
と思った。
辰吉が試合前からいつものビッグマウスな割にどこか自分に自信が無さげだったのに比べて、ウィラポンは気力満々だったからだ。
そして辰吉に見事なKOで勝利した。
その後は、体つきといい、バランスのとれたテクニックといい、真摯な態度といい、ウィラポンのファンになった。
彼は30代でチャンピオンになったにも関わらず、6年以上その座に君臨し、14度もの防衛を果たした。
そのウィラポンにパッとしない感じで判定勝利した長谷川を、それまでもよく知らなかったし、どう評していいかわからなかったのだ。
さすがのウィラポンも年齢的に限界だったか…と思うしかなかった。
ついでに言えばこのとき、長谷川24歳、ウィラポン37歳だ。

そんなわけで長谷川にはあまり興味を持っていなくて、試合も観ていなかったが、防衛を重ねていくのを報道で知れば、さすがに実力を認めないわけにはいかない。
そして6~7度目の防衛戦をたまたま観たとき、試合内容やKOシーンを見て、彼への印象がガラッと変わってしまった。

さて、本題。

何回か前の防衛戦のとき、TVで、長谷川選手のパンチの速さの秘密として、彼が拳を握らずにシャドーを行うのが紹介されていた。
前述の引用の中で書いてあるのは、たぶんそのときのものではないだろうか。
今回も試合前夜に日テレの報道番組『NEWS ZERO』で特集していたが、そこでも同様の練習映像が流れていた。
…まぁ、松田さんでなくとも中国拳法をやっている人は、長谷川のこの映像を見て、
「中国拳法と同じだ!」
と思った人は多いんじゃないだろうか。

しかし。。

安易にそう思うのは早計で、幾つか踏まえておかなければならないことがある。

中国拳法ではよくボクシングと同様に当たる瞬間に拳を強く握るという説明があるが、素手ではそんなことは上手く出来ない。

日本でポピュラーな中国拳法の突き技は、「全身をゆるめて肩を出し伸びやかに突く」と教えられるだろう。
そのとき、わざわざ自分で拳を強く握ったら、失速し、場合によっては威力が落ちてしまう。
目標物に当たることによって自然に力が入るというのが正しいのではないだろうか。
そして、一発だけならまだしも、連打となると、毎回緩めて握ってを繰り返しながら速く突けるわけがない。
つまり拳を速く振ろうと思ったら、最初から、緩く握っておくか、固く握っておくか、だ。
さらに、緩く握った拳のままで、素手で連打ができるだろうか?
解らない人は、人間の弾力に近そうなもの(例えばサンドバッグとか革のミットとか)を、素手で緩い握りのままで連打してみるといい。
ペチペチと当てるのでなく一定以上の強さで、連打するのは困難なはずだ。
下手をすると拳や手首を痛めてしまう。
だから長谷川選手の拳を握らないままシャドーするのは、あくまでも手を速く振るための練習だし、それが生きるのは、バンテージを巻きグローブを着けているからだと思うのだが。。

では、武術的にはどうすればいいのか、ということは、それぞれ考えてもらいたい。
僕が習ったことや思いついた方法をここで安易に披露する気はない。
それに答えが一つとも限らない。
すでに考える材料としては、これで充分ではないだろうか。。

以下、コメント

旧ブログからの移転にあたり、掲載当時のコメントはこの下に“引用”のかたちで付けておきます。管理人からのレスは囲みの色を分けてわかりやすくしておきます。
なお、現在はコメント機能は使用しておりません。ご意見、ご感想等はメールにてお願い致します。

hideさん初めまして!
凄い格闘技経験をお持ちでびっくりしました。

スポ-ツ専門学校で生体力学もならったのでパンチのスピ-ド等の分析の話には興味があります。

僕は長谷川選手の6戦目の時に戦ったのですが、その時は今までの相手よりもパンチ力が軽かったです。

でもあごの先端とか急所にパンチをあてるのがうまく右ストレ-トにアッパ-を合わせられていつの間にか膝をついてダウンしていました。

その時からスピ-ドはありましたが、今の長谷川選手は本当に手がつけられませんね~!

これからもよろしくお願い致します。

Posted by カンセツマン at 2009年12月31日 11:39

》カンセツマンさん

こんにちは。初めまして。
コメントをありがとうございます。

> 凄い格闘技経験をお持ちでびっくりしました。

いえいえ、そんな大した経験はないのですよ。(^^;ゞ
まともな試合に出たこともないですし、少しばかり喧嘩の経験が豊富なだけで、あとはブランクもありますし、今はただ自己満足の世界に浸って続けてるだけです。

> スポ-ツ専門学校で生体力学もならったのでパンチのスピ-ド等の分析の話には
> 興味があります。

では僕より詳しいのではないでしょうか?
僕も興味ありますので、何か思うことや気がついたことがあれば教えて下さい。(^_^ゞ

> 僕は長谷川選手の6戦目の時に戦ったのですが、

長谷川選手と戦ったことがあるのですか?
彼のキャリアの中での6戦目の相手ということですよね?
調べてみるとYさんという方になっていますが。。
もしそのYさんであるなら、僕が育ったのはN区なので、何となく親しみが湧きますね。
こちらこそ、これからよろしくお願いします。

Posted by hide at 2009年12月31日 15:43

明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
hideさんもN区でそだったのですね!

偶然ですね(笑)

Posted by カンセツマン at 2010年01月11日 15:49

>カンセツマンさん

あけましておめでとうございます。

N区、濃いところですよね(笑)
まー僕はたぶん、だいぶ年上だと思いますが、僕の頃はなおのこと、濃い土地柄でしたよ(笑)

Posted by hide at 2010年01月12日 23:58

はじめまして。面白い記事ですね。長谷川穂積はいいボクサーですね。畑山隆則の次に好きなボクサーです。。。。。。。自分は詠春拳をやっておりますが、昔、詠春拳の突き技の連打で思うようにいかずに悩んでいた時に、テレビで見た長谷川選手の握ってないブラブラな手を標的に投げつけるような脱力シャドーボクシングは大いに参考になりました。彼のシャドーを参考にしてから、ムダな力が入らなくなり接近戦での突き技の連打のスピードと威力が上がりました。喧嘩や組み手でついつい忘れがちですが、リラックス状態は一番大事だと彼に気づかされました。

Posted by シュレティンガーの犬 at 2012年11月21日 03:35

>シュレティンガーの犬さん

こんにちは。初めまして。
コメントをありがとうございます。

リラックスは大事だと思いますが、僕は中国拳法ではことさらそういうことを言い過ぎだという気もしています。
現実、拳が当たる瞬間には力が入るものですし、拳にしろ身体の各部にしろずっと緩めたままというわけにはいきません。
まー、、難しいところですけどね。。(^_^;)

Posted by hide~☆ at 2012年11月21日 05:59

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