中国拳法、武術、格闘技など、徒然気ままに…

太極拳ってど〜よ!?

徒然エッセイ

0.2秒の攻防

投稿日:2009年12月29日

喧嘩の経験から色々考えた経緯をまだ書ききれていないので、ちょっと話が前後してしまうのだけど、ボクシングの話ついでに…。
と言っても、今回のテーマは武術なのだが、きっかけとしてボクシングにまつわるデータが発端となっている。
そしてまた「武術」というよりも、格闘技全般の永遠のテーマと言ってもいいのかも知れない。
要は、相手との距離の詰め方、そして、いかに早く先にきつい一発をおみまいするか(あるいは攻撃を成功させるか)、だ。
習った技や自分なりの工夫や方法論は幾つかあっても、絶対というものはあり得ない。

…で、今回は特に、突きやパンチのお話。

数年前のあるとき、ネットを徘徊していてたまたま、パンチの速度について書かれてあるのを見た。
どこで見たどういう文章だったのかは憶えていないが、突きやパンチの速度は、何らかの武術・格闘技の訓練を積んだ人でも、大体時速30km程度だという内容だった。
そのときは即座に、
「え!? ヒトのパンチってそんなに遅いの!?」
と思った。
たぶんこれを今初めて知った人は、同じ思いではないだろうか?

そこで調べてみると、検索結果の一つに、元WBA世界Jrフライ級チャンピオンの具志堅用高さんが、全盛時にTV番組でパンチの速度を計測したところ、秒速12mだった、というのがあった。
秒速12mを時速に換算すると、43.2kmだ。
「ふぅん。それでも40キロそこそこなのか…?」
と思ったが、実はとてつもなく速い。
計測の方法は、構えたところからサンドバッグを叩いて、その映像を5cmきざみで移動にかかった時間からスピードを割り出したそうだ。
ただ、この情報は、書いている人によって数値にバラつきがあり、実際にどうだったのかはよくわからない。
ただともかく、ボクサーのパンチスピードが30km程度だという情報は、ちょっと検索してみれば多くヒットする。

では、時速30km(秒速8.33m)で考えてみる。
ボクシングのように顔の近くで拳を構えたところから、腕を伸ばせば目標に届くとしよう。
その距離を60cmとして、単純に移動にかかる時間は、0.07秒だ。
人間の反応速度は0.1秒と言われているから、これでは避けられない。
そう考えると、先ほどの43.2kmなんて信じがたい速さだし、計り方がおかしかったんじゃないか?…とも思ってしまう。
さっき「とてつもなく速い」と書いたのが、これでお解りだろう。

もちろん、試合ではもっと距離を取るし、ステップのリズムやパンチの動作に移るときの兆しを読み合い、さらにパンチを届かせるために一歩出る時間もかかるから、0.1秒以内のパンチなんてあり得ない。

…どうだろう?
時速30kmに現実感が湧いただろうか。。

さらに。
一歩出るのも含めて、ボクサーがパンチを出すのにかかる時間はと言うと、以前、こんな番組があった。

『ミラクルボディー 第4回 反応の限界を超えろ ~特撮・一瞬の闘い~』

NHKで2008年5月4日に放送されたもので、これは放送時に直接見た。
実はこの番組の話だけで記事を一つ書こうかと思っていたのだけど、とりあえず部分的に触れることにする。
この中で元WBC世界ミニマム級チャンピオン、イーグル・デーン・ジュンラパン選手のスパーリング映像があった。
ハイスピードカメラが捉えた相手選手が繰り出すパンチはおよそ0.2秒。
イーグル選手が回避動作を始めるのは0.16秒あたりからだった。

先日の内藤×亀田戦で、内藤が亀田のノーモーションからのパンチを何度か喰らっていたけれども、これは、一旦届く距離まで来てから出されると非常に避けにくい。
上記のことからもよく判るだろう。
(そういう距離を許してしまった内藤が悪いのだが、3ラウンドあたりに鼻血を出したせいで距離感が狂っていたのか…?)

ここでちょっと整理しよう。。

ボクサーのパンチのスピードは時速30km台で、繰り出す時間は0.06~0.07秒ほど。
ただ、腕を速く振るということに限れば、素人でもそう変わらないだろう。
なので、データがボクシングのみだが、空手や拳法の突きでも速い人のは同等だろうと思う。
そして、攻撃をヒットさせるためには、相手との距離を詰めなければならない。
いかに兆しを悟られずにいち早く距離を詰めるられるかということも、一つの鍵だ。
つまり歩法も含めて0.2秒以内の攻撃を出せれば、相手はかなり避けにくいということになる。
逆に、後手で考えれば、この0.2秒以上の時間が稼げる距離をおいておかなければ、攻撃を喰らう可能性が高くなるということだ。

…ただ、もちろん武術は競技では無いので、勝負はこういったスピードだけではない。
駆け引きにより相手の心理や動きを操り、主導権を取って、相手が得意なことを何もさせずに勝つということが理想だし、単純にスピードの優劣だけではない。
しかしイザ向かい合ってしまえば、スピードが重要な要素の一つであることは否定のしようがないだろう。
幾らボクシングがパンチのみとは言え、パンチに特化した分そのスピードは侮れないし、人間の反応速度というものを見る上でも非常に参考になる。

そしてその反応速度についてだが、前述のNHK番組で、陸上競技の選手がスタート合図から0.1秒以内に反応すると不正スタート(フライング)と見なされてしまう問題にも触れていた。
0.1秒という規定は医学的根拠に基づいているそうだが、最新機材を使った番組の実験では、0.08秒(だったかな?)で反応できる選手も居ることが判った。
もちろんこれも、武術に関して言えば、
一定以上の反応速度、そして身体を速く動かせることは、重要なのだが、さっきも書いたようにそれがすべてでは無いので、あまり細かいところまで競うように拘るのはどうかと思う。
けれど数値で考えてみることも大事だ。
実用的な用法を検証したり、当てる技術を考える上でも、興味深い。

あとはそれぞれ、発展させて、
色んなことを考えてみてもらえればと思う。

以下、コメント

旧ブログからの移転にあたり、掲載当時のコメントはこの下に“引用”のかたちで付けておきます。管理人からのレスは囲みの色を分けてわかりやすくしておきます。
なお、現在はコメント機能は使用しておりません。ご意見、ご感想等はメールにてお願い致します。

初めまして私はボクシングやってましたがこの数字はおもしろいですね。

またブログのぞきにきますのでよろしくお願いします。

Posted by すぎtaka at 2010年01月04日 16:24

>すぎtakaさん

初めまして。コメントをありがとうございます。

思うことや気づいたことなどがあれば、意見を書いていただければなお嬉しいです。
今後ともどうぞよろしくお願いします。

Posted by hide at 2010年01月04日 21:47

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