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太極拳ってど〜よ!?

徒然エッセイ

金鷹拳の思い出

投稿日:2009年2月12日

僕がまだ、師匠であるT先生のところに入門して間がない頃のこと。
(そういえば今まで“ウチの先生”と書いていたけど、ややこしくならないように今後はT先生と書くことにする)

最初は、何となく形意拳に興味と期待を抱いていたのだけど、まずは太極拳から入らないとすぐには教えてもらえないとのことだったので、同時期に入った兄弟弟子共々大急ぎで太極拳九十九勢を覚えた。
当時は松田隆智さんの影響で、
「陳家以外の太極拳は武術としての色合いを失っている」
と思っていて、初めは仕方なくという感じもあったのだけど、やってみるとそうではないことが判って、この太極拳にハマッていった。
そしてようやく太極拳の型を覚えて、これから細かいところを指導してもらおうと思っていた矢先、大和道(佐藤金兵衛先生が創始した柔術)や柳生心眼流などの古武術を稽古し始めた。
「太極拳もまだ型の順序を覚えたばかりなのに…」
と、僕らはこぼしていたが、他の武術にもやはり興味はある。
結局、太極拳の型を少しずつ修正してもらいながら、推手、組手、古武術の型稽古…など、平行して練習する日々が続いた。
そこにまた加えられたのが、金鷹拳だった。

あるとき、T先生から、
「これから金鷹拳もやるからね」
と言われた。
「きんようけん!?」
僕らはキョトンとしていたが、内心は、
「えー、また違う拳法やんのぉ?」
と思っていた。
「南派少林拳の一種やて。金兵衛先生が少林拳の本2冊出してるやろ。それに紹介されてるのが金鷹拳」
「…はあ」
これまた松田さんの影響で南派拳法と北派拳法は相容れない印象があったので、僕らは戸惑った。
幾つもの武術を併習して混乱気味な上、形意拳や八卦掌もなかなかやれず、また別の拳法、それも南派拳とは………って感じ。。

まあしょーがない。

確か1~2度だったか数回だったか、最初はT先生から指導を受けたが、その後、
「実は金鷹拳は僕も始めたばかりやから、指導はSさんにお願いすることにした」
と告げられた。
「先生の兄弟弟子の方の…?」
「そうそう。Sさんの金鷹拳は日本一やからな!」
道場に居た僕たち数人は、
「へー!」
と感心しながら、
「金鷹拳って、日本でどれくらいの人数がやってるんですか?」
と訊いた。
「う~ん。100人くらいは居るんちゃう?」
(うっ。微妙………)
そのあと兄弟弟子たちと、
「それにしても南派拳法と併習なんてできるんやろか?」
と、期待と不安を話し合った。

そして、T先生の兄弟弟子の“Sさん”が指導に来て下さる日が決まったとき、
「きみらこれからSさんにも教えてもらうわけやから、Sさんのことも先生と呼びや」
と言われた。
そんなわけで僕らは、2人の先生から指導を受けることになった。
そのS先生が、T先生や僕が今所属している流派の長だ。

S先生は、シャキシャキ・サバサバした感じの人で、ちょっと恐そうだが優しく、指導時は冗談交じりで楽しい。
当時の僕は、中学生の頃に習いに行っていた空手の道場に居た先輩指導員とイメージが重なって親しみを感じていた。
確か月2回来られて、S先生からは金鷹拳の指導を主に受けたのだけど、他のこともちょくちょく教わり、
「あ、これはまだTに教わってなかったか? 言うてまずかったかな(笑)」
と、ぽろり。。
そのあとで、次の練習日あたりT先生が、
「これはもう少し後で教えようと思ってたけど、この前Sさんが言うてしもうたから、しゃーない、教えたろ…」
となるので、僕らはS先生が来られるのを毎回楽しみにしていた。

さて、その金鷹拳。
金鷹拳独自の鷹爪手と、その手形で行うユニークな受けがある。
型の上では、拗歩で受けを行い順歩突きとなる基本の受け・突きが特徴的で、これがいかにも蓄・発を表現しているように思えた。
また型は伸び伸びとしていて、力強く踏ん張って行う南派拳のイメージとはずいぶん違って見えた。
あとは空手にも似ていたが、肩を出して突くところ、円の動きがふんだんに含まれているところなどは、それまでに僕が習った範囲の空手とは異なっていた。
…ただ、
正直言うと、すぐには好きになれなかった。
太極拳は両手を同時に使うのに、金鷹拳は空手のように受けと攻撃が分かれている。
併習してメリットがあるのか?…と感じたからだった。
しかし、技が華麗でバラエティに富んでいるため、型が進む内、
「カッコいい!」
と思うようになり、意外に使いやすそうな技も多くて、面白くなってきた。
そして拳理としても、詰めていけば太極拳とも差がない…というか、通じる部分が多く思えてきた。

型は、基本の“拳母”が3本、そのあと“蝶”の型が続く。
蝶の型は、蝶頭、蝶尾に分かれ、七蝶まであるから、一蝶頭、一蝶尾、二蝶頭、二蝶尾…というように、14あることになる。
聞くところによると、蝶の後には、蝶を卒業する意味合いの“蝶外”という型があって、そこから本当の鷹の型へと続いていくのだという。
ただ残念なことに、この金鷹拳、ウチには途中までしか伝わっていない。
S先生も修行半ばで、師であるX先生と台湾の老師との交流が途絶えたらしい。
もちろん美味しいところ取り的に取り入れてはいるのだが、今ではあまり練習しなくなってしまった。

なお、金鷹拳に関する書籍は以下の3冊がある。

『中国少林拳法』佐藤金兵衛・著 愛隆堂(1979年)
『中国拳法 少林拳』佐藤金兵衛・著 愛隆堂(1986年)
『台湾振興社伝統武術 金鷹拳―中国南少林寺正統』小佐野淳・著 新紀元社(2007年)

上記『少林拳』より『少林拳法』の方が後だと思っていたけど、発刊年を見ると逆だった。
オススメは『少林拳法』の方で、陳炎順老師、林茂南老師(金兵衛先生の本では「林錦南」と表記されているが、「林茂南」が正しいそうだ)の演武写真があり、僕らが習った型もこれに近い。

ちなみに、YouTubeに台湾人の金鷹拳の動画が多数上がっているが、僕が習ったのとは多少カタチが違う。
受け方が少し違うし、突きも違う。
僕らが習ったようなカタチのものは、あまり伝承されていないのだろうか……?

※一部の文章を変更・削除しました。
(2017/12/01)
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