中国拳法、武術、格闘技など、徒然気ままに…

太極拳ってど〜よ!?

徒然エッセイ

攻防のジレンマ

投稿日:2008年7月13日

太極拳を始めてから数年の間、用法を考える上で、まず抵抗を感じていたことがある。
それは距離の問題だった。

太極拳では、“沾、粘、連、随”(※日本語読みで「せん、ねん、れん、ずい」。以下、沾粘連随)という要訣があるように、まず相手の手に触れて、貼り付き従う戦法を取るとされている。
当時の書籍等では、
「まず相手の手に触れ、相手がそれを引こうとすれば離れず付き従い、攻撃してくれば化勁で流し、機に乗じて攻撃する」
---というようなことが書かれてあった。
昔から柔道で言われている
「押さば引け、引かば押せ」
にも似ている。
もっとも、“空気投げ”や“球車”の技で有名な故・三船久蔵氏は、
「押さば回れ、引かば斜めに出よ」
と言い換えたそうだ。
また、柔道では組み合ったときのことを言っていると思うが、太極拳は拳法だ。
突き・蹴りの攻防ではどうすればいいのだろうか?

…色々と想像を膨らませたが、現実、自由に攻防する中では難しい。

例えば、構えている手に触れに行こうとしたとき、相手がそれを避けようとすればなかなか触れられないし、無理に追いかければ自分の方が姿勢が開き崩れてしまう。
すかさず攻撃されれば、先に手を触れておいて流すというようなことはできない。
それに、触れられる余裕があれば、突いたり蹴ったりできるんじゃないかという疑問も生じる。
だからと言って、離れたところから突き・蹴りを出し合うと、現代空手やボクシング、大方の格闘技と同じように、フェイントのかけ合い、リズムの読み合いになってしまう。
そこからの脱却を中国武術や古武術に求めたのに…。

今なら、自分なりの工夫や、先生と再会してから教わったことなどもあって、幾らかの答えはある。
(どストライクな答えかどうかはわからんケド…)
しかし当時は皆目わからなかった。
とにかく、そういうやり方があって、出来る人が居て、自分ができないのはまだまだ未熟なせいだと、ただ型の修練に勤しんでいた。

そして、、
太極拳では、相手の攻撃を流すように受け、相手の懐に入って攻撃する技が多い。
本にある解説でも、その頃教わった用法でも、“沾粘連随”が生きているのかどうかはともかく、相手に接近し貼り付いたかたちになって攻撃する。
術理として、貼り付くことで相手の攻撃を封じる意味もあるし、その距離での攻防を得意になるための修練を行うわけだが、でも僕には抵抗があった。
それはやっぱり、掴まった場合に対する危機感があったからだ。
太極拳は未熟だし、使い方もよく解らず、手探り状態。
突きや掌打一発で倒す自信もない。
攻撃力に自信がないのに、相手に貼り付くように接近するのは自殺行為とさえ思っていた。

昔、道場で、僕より大きい人が入門して来ても、推手をやれば先輩風を吹かせて手玉に取れた。
(あまり露骨に優位を見せたりはしなかったけど…)
しかし推手が少しばかり上手くなったからと言って、柔道や相撲をやっている人に簡単に勝てるようになるわけではない。
柔術の“手ほどき”(手首を持たれたのを外す練習)などで、力の強い人に掴まれても割と簡単に外せた。
けれど道場の外で、誰かと武道の話になったとき、その都度簡単に外せたかと言えば、そうではなかった。

ちなみにこの場合、厳密には、外せるかどうかが重要なのではない。
実戦的には、掴まれそうな一瞬や掴まれた直後なら、外すのにそれほど力は要らないし、例え掴まれても、掴まれたまま攻撃するなり、足を踏むとか目を突くとかしてその瞬間に外すなりすればいい。
しかし基本として、持たれた手を説明通り上手く外せるかどうかは一つの目安だし、色んな人にうまくできるかどうか試すことは、それ自体が参考になるし練習にもなる。

…まぁ、でも。。
“推手”や“手ほどき”が少しくらいできるようになって自信を持つとしたら、それはそれで危険なことだったかも知れない…。
ともかく僕は、実戦(20代の頃の喧嘩)で、相手の懐に思い切って入ることは、結局できなかった。

理想としては、防御の瞬間、触れたとき、相手を崩すことができれば、非力でも優位に立てる。
相手より速く攻撃できるし、投げるにしても跳ね飛ばすにしても、それほど力は要らない。
つまり、触れた瞬間に技がかかっているのと同じだ。
けれどやはり、実戦では簡単ではない。
何を実戦と言うのかということもあるけど、例えつまらない喧嘩でも、相手が素人なら簡単というわけでもない。素人もピンキリだ。

…で。
太極拳や古武術では、自由な攻防の組手はあまりやらないし、僕のように疑問を持っている人も多いと思うが、逆に、推手や約束組手だけで想像を膨らませ、使える気になっている人も多いのではないだろうか…?
また、自由組手やスパーをやったとしても、ルールを設けてお約束的な動きでライトコンタクトするだけだと、素人の意外な動きに面食らう場合があると思う。
もちろん危ないことを試してわざわざ怪我する必要は無いと思うが、現実的な意味での想像力を働かせて、色んなことを想定しておかなければならないだろう。

気づいたつもり、解ったつもりになっていないかも含めて、考えてみた方がいい。

 

以下、コメント

旧ブログからの移転にあたり、掲載当時のコメントはこの下に“引用”のかたちで付けておきます。管理人からのレスは囲みの色を分けてわかりやすくしておきます。
なお、現在はコメント機能は使用しておりません。ご意見、ご感想等はメールにてお願い致します。

よく読ませて貰ってます。多角的に色々なことを考えられていて、それが分かりやすく書かれてるのでとても面白いです。

私は合気道を10年くらい(3年ほどブランクあり)やってますが、過去にはキックボクシングをしたり、今はブラジリアン柔術にはまってます。

>理想としては、防御の瞬間、触れたとき、相手を崩>すことができれば、非力でも優位に立てる。

>逆に、推手や約束組手だけで想像を膨らませ、使え>る気になっている人も多いのではないだろうか…?

合気道も「触れた瞬間に・・」を理想としてるんですが、実際は相手の攻め方が相当限定されてないと無理です。
そこで相手の攻め手を限定する誘いの動き(予想外の動きら間合いを切れる体勢と距離を作る)を考えて試しますが、なかなかうまく行きません。

個人的には合気道自体が楽しいので、実戦に使えなくていいかなと思うこともありますが、護身術だと思ってやってる後輩が時々いて、そういう人達にはちゃんと実戦的なことを教えて上げたいのですが、合気道の動きだけで実戦的にというのはやはり難しく悩んでます。何の因果か武道と分類されてますしね。

>押さば引け、引かば斜めに出よ

個人的には「押さば斜めに出よ、引かば裏に入れ」という感じでしょうか。相手が読んでないのが前提ですが。

色々読んで考えさせて貰ってるお礼だけのつもりが長くなってしまいました。すいません。

Posted by カズ at 2008年07月21日 00:33

>カズさん

こんにちは。初めまして。
コメントをありがとうございます。

> よく読ませて貰ってます。多角的に色々なことを考えられていて、
> それが分かりやすく書かれてるのでとても面白いです。

ありがとうございます。励みになります。
予定している記事は色々あるんですが、なかなか進みません。(^^;ゞ
辛抱強くおつき合いいただければ幸いです。

> 合気道も「触れた瞬間に・・」を理想としてるんですが、実際は相手の
> 攻め方が相当限定されてないと無理です。

僕は合気道も部分的には教わっていますが、専門的・継続的に
やっているわけではなく、門外漢なので偉そうなことは言えません。
でもあえて意見を述べることをご容赦下さい。

基本的に合気道は、打撃に対しては、2人組の型の上で、
突きや手刀に対する型を行いますが、現代格闘技のような様々な
打撃に対する練習をしているところは少ないのではないでしょうか。

塩田剛三さんの多人数掛けをご覧になったことはありますか?

塩田さんの多人数掛けを見ていると、
チャンバラの殺陣のようにお約束な部分もチラホラありますが、
技のかけ方やタイミングは抜群に上手いですし、
用法として有効なものも含まれていると思います。
例えば、
片手で受けながらもう一方の手で投げの体勢に入っているとか。
突きを捌きながら(もしくは交わしながら)肘打ちとか。
太極拳の使い方もこれと似ていると思います。

結局、投げたり固めたりするのは、戦場で言えば首を刈るためで、
相手の攻撃を交わして何かをするときは、昔で言えば刀で切ると
いうことになり、現代的には打撃をおみまいすることだと思います。
そのように、相手と合わさる一瞬、
合気道の理合い的には、剣ならどのように切るかを考えて、
拳なり掌なり手刀なりの打撃をおみまいし、
投げられるのなら投げる、極められるのなら極める、
というように考えればいいんじゃないでしょうか。。

参考になれば幸いです。

> そこで相手の攻め手を限定する誘いの動き(予想外の動きら間合いを
> 切れる体勢と距離を作る)を考えて試しますが、なかなかうまく行きません。

どんな格闘技術でも得意とする距離があると思いますが、
その距離を容易にとらせてもらえるとは限りませんね。
それに、
そういう距離を取ることができない場所、シチュエーションのとき、
どうするかということも考えておかないといけないでしょうね。

> 護身術だと思ってやってる後輩が時々いて、そういう人達にはちゃんと
> 実戦的なことを教えて上げたいのですが、

本来は、相手を斃す(殺す)のが武術で、
最低限の身を護るのが護身術だと思いますが、
近頃はその定義も崩れてきている感があります。
武術・武道と言っても、本当に人を殺すわけにはいきませんし、
それに準ずるダメージを与えるわけにもいきません。
また社会のルールとしては、先に手を出すのもいけません。
ところが路上の方が危険が大きいわけで、返って護身術の方が
実戦的になってきているという本末転倒な状況があります。
個人的には、武道とか護身とか、あまりそこには拘らず、
色んな場合を想定して、何ができるかを考えるようにしています。

> 個人的には「押さば斜めに出よ、引かば裏に入れ」という感じで
> しょうか。相手が読んでないのが前提ですが。

なるほど。。
やりたいことは解る気がします。
僕的解釈でなら、
「押さば回れ、引かば止まれ」
って感じでしょうか。
後者は、抵抗して一瞬止まれば、相手は次の動きをしますから、
そのときを狙うという意味です。

まぁ、いずれにしても、簡単ではありませんよね。。(^^;(笑)

Posted by hide at 2008年07月21日 03:21

アドバイスありがとうございます。言われる通り打撃の方が投げ、極めよりも有効というケースは多々あります。打撃を警戒した動きを相手が取るからこそ掛る投げもあります。臨機応変な護身となると、ますます打撃の重要さは増します。まったく難しいですね(^^)。

ちなみに塩田先生の演武はYou tube等で探してよく見てます。身体の軸のブレの少なさと、ここぞという所で全身が弾けるように、かつ重心がぶれずに動くのは見てて引き込まれます。

Posted by カズ at 2008年07月24日 01:32

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