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太極拳ってど〜よ!?

徒然エッセイ

W先生との出会い

投稿日:2007年5月29日

話は再び、入門してからの数年間に戻る。

先生には稽古を共にして来た仲のいい兄弟弟子が居て、先生を含めて3人だった。
その内のS先生は当時、大阪の南方面の支部道場を担当していて、ウチの先生が北方面だった。
もう1人のTさんは、特に道場を担当しているわけではなかったが、時折覗きに来て色々と話を聞かせてくれた。
S先生には、途中から金鷹拳を指導してもらえることになり、僕らはウチの先生からも教わりながら、月に2回ほどS先生からも指導を受けた。
そんなわけでS先生のことも“先生”と呼ぶようになったのだが、今ではそのS先生が僕が学んでいる流派の長で、改めてまたご指導いただいている。

それはともかく、当時の疑問として、
僕は、ウチの先生やその兄弟弟子の方々が、何故こうも拳法を身につけられたのかということが不思議で仕方がなかった。
当時、先生たちは1~2ヶ月に1回くらい(?)、東京本部に出かけて指導を受けていたようだが、僕は最初、先生が初心者の頃からそんな風に通いながら習っていたのかと思っていたので、
「それでよくあんなに身についたものだなぁ」
と感心していた。
まぁでも、僕らだって道場は週2回で月8回だし、当初は月4回のはずだったから、先生方が東京に習いに行く場合だって、何日か泊まりで行けば、詰め込みになるけど、それを繰り返せば似たようなものか…とも考えた。
それでも、しょっちゅう行くのは資金面できついだろうし、すごいなぁ…とただただ驚く思いだった。
でも、ほどなくその疑問は解けた。
先生方には、大阪にも太極拳を学んだ師がいらっしゃったのだ。
それが、W先生だった。

僕が入門して1年経った頃だったと思うが、夏休みの時期に、兄弟弟子たちとW先生のところに連れて行っていただけることになった。
当時、W先生はとある大学付属高校で非常勤の教師をされていた。
すでに70歳を過ぎていらっしゃった。
温厚で物静かな口調で、
「きみたち太極拳は普段習っているだろうから、私は合気道を教えてあげるよ」
と、学校にある柔・剣道場で、合気道の指導をしていただけることになった。

W先生は、太極拳をやる前、若い頃から合気道をやってらっしゃったそうで、合気道歴は40年以上。植芝盛平にも学んだとのことだった。
合気道の団体にも所属していた関係で、要人警護のSPが合気道の指導を受けに来たりもしていたらしい。
太極拳を始めたのは50歳を過ぎてからで、僕らがお会いしたときで太極拳歴16年とおっしゃっていた。
それと、驚かされたのは演武回数で、太極拳九十九勢をすでに1万回終えて、もうすぐ2万回を数えるという。
1万回を10年でやろうと思ったら、毎日約3回やらなければならない。
16年でもうすぐ2万回というのだから、おそらく3回以上やっていることになる。
しかも、その頃には左右逆の演武もやっているとのことだった。
僕らは絶句して固まった。

そして柔・剣道場に移動したのだが、敷地内の丘の上にある道場まで歩くときの足取りの軽やかなこと。
とても70代のご老人とは思えない。
ふと景色に目をやって、前を見ると、W先生は思ったより先を歩いている。
まるで瞬間移動したかのように見えるほどだ。
「こんな年寄りが本当に居るんだ!」
…し、失礼ながら、マジにそう思った。。(^_^;)

道場に入ると、まず受け身を練習してから、小手返しや四方投げの手解きをしていただいた。
小手返しのときは、確か、手刀や突きを要求された。
突きは、正直言って最初は遠慮しながら突いた。
すると、
「もっと速く突いて来なさい」
と言われたので、徐々に力を入れた。
それでも物足りないらしく、
「本気で突いておいで」
と言われて、本当に本気で突いたのだが、あっさりひっくり返された。
約束上とは言え老人とは思えない俊敏な動きだし、とにかく巧い。逆らえない。
「名人だ。初めて名人を見た!」
と思った。
何ら摩訶不思議なことは無い。
足腰がしっかりしていて、俊敏で、技が巧い。
今まで“名人”というものが想像できなかったが、こういう人こそが名人なんだ、と思った。
そしてまた、僕らはそれまで、正直言って、年の近い自分たちの先生に対して半信半疑な気持ちもあったのだが、W先生を見て考えが変わった。
「こんな先生に学んだからこそ、ウチの先生も上手いんだな」
と思った。
正宗太極拳はその頃マイナーだったし、大陸系の本場と言われるものも入ってきつつあり、多少目移りする気持ちもあったのだが、だからと言って、有名老師を招いて講習会などをやっているのを見に行くと、体操のような大きな型ばかりをやっていて、武術的には疑問を感じた。
少なくとも僕的には、ウチの流派がしっくりと自分に合うと思った。

W先生のところへは、その夏2~3度お邪魔した気がするのだが、記憶に自信がない。
ただ、稽古が終わってお茶を出していただき、口伝を1つ教えていただいて、護身の心得を語っていただいたのが印象的で、内容は今でも憶えている。

W先生とはその夏以来、お会いしていない。
現在は90歳を過ぎて、今でも太極拳をやってらっしゃるそうだ。
お元気な内にまたお会いできれば嬉しいのだが。。

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