中国拳法、武術、格闘技など、徒然気ままに…

太極拳ってど〜よ!?

徒然エッセイ

あれも発勁、これも発勁。。。

投稿日:2007年6月3日

松田隆智さんによってもたらされた“発勁”は、中国武術の秘伝として、武道・格闘技にあこがれる者たちの間にセンセーショナルを巻き起こした。
そして、その後の格闘漫画にも取り上げられて一般的にも広まり、発勁は未だに中国武術の秘伝技として描かれ続けている。
その一方で、今では発勁は「瞬発的な力」や「強い力」のように解釈されて、中国武術の団体や流派によってはポピュラーな術語の一つになっているようだ。
また、中国武術以外の流派の人が、さも元からあったかのように、この解釈を以て解説しているのを見かけることもある。

果たしてこれらの真はどこにあるのか…?

松田さんが発勁を初めて紹介した頃は、まさに秘伝技として書かれていた。
中国武術がブームになり始めた頃、
「発勁とは!?」
と想像をめぐらせた世代からすれば、秘中の秘であったはずの発勁が、
「ちょっとコツが解れば誰でもできる」
というような、“タネのある力の使い方”程度に成り下がってしまった印象だろう。

個人的な感想を言えば、
一時は、発勁を知らない中国武術の師範(老師)は、
「真正なものを伝えられていない」
と、素人や初心者から認められないほどの勢いだったので、あちこちで教授を始めた団体・流派(門派)が勝手にでっち上げたのではないかとさえ思った。
「発勁くらいありますよ。不思議なもんじゃありません。誰でもできますよ」
---と。

入門して2年ほど経ったある日のこと。。

大阪駅(梅田)付近のビルの地下で食事をしていると、突然、気になる言葉が耳に飛び込んできた。
すぐ後ろのテーブル席に付いた少し歳上くらいの2人の男性が中国武術の話をし始めたのだ。
よく聞こえる声でしきりに「発勁」「発勁」と連発しているので、どうも気になってしまった。
確か、型の動作や要領などについて話していて、
「ここでこう発勁を入れて…」
というように、「発勁」という言葉を使っていたと思う。
(この2人、発勁を知ってるのか!?)
それで、思い切って話しかけた。
2人はちょっと驚いたが、愛想良く返してくれた。
少し話して、型を見せて欲しいとねだるとあっさりOKしてくれて、食事が済んだら近くの公園に行こうということになった。

2人は、いかにも文化系的なノリの大人しそうな、たぶん大学生だったと思う。
日中友好協会系の教室かサークルの人たちだった。
記憶に自信がないが、確か、形意拳の五行拳2つか3つと、長拳の基礎のような型を部分的にやって見せてくれたのだったと思う。
動きがイマイチぎこちなくて、あまりキャリアは無さそうだった。
「あの、さっきの店で発勁の話をしてましたよね。発勁をご存知なんですか?」
すると2人は、
「あー」
と顔を見合わせて笑いながら、
「発勁、習ってるよ。さっき型の中でもやったんだけど…」
と、型の中にある動作をまたやって見せて、しゅっと手を出した。
「???」
僕がキョトンとしていると、
「発勁はこう…瞬発的に出すんだよ。これが発勁」
と説明を足した。
(な、何ィ~?それが発勁だとぉ!?)
心の中で思ったが、頼んで見せてもらったのにケチをつけるわけにもいかない。

まぁ、その発勁とやらも、力を抜いて腰から発し、腕をロープのようにしならせ、拳に至る際に完成動作を極めようとしているのは解る。
だが動作が大きくわかりやすい。
幾ら最初は“明勁”だとは言っても、中途半端だし、空手の突きやボクシングのパンチの方がよほど流暢で速い。

「それって、例えば近距離から打っても効くんですか?」
「うん。そうなれればいいんだけど、でも僕らはまだ未熟だから…」
ふぅむ…。
ちょっと考えて、
「あの、そちらではこういう練習します?腹にこう手を当てて、そこから突くんです」
と、1人の腹に拳を当てた格好をして、訊ねてみた。
2人はめずらしそうに、
「エ?何?ナニ?」
という反応をしたので、
「じゃあ、やってみていいですか?僕も未熟だから威力はありませんので」
と了解を得て、くっと突いた。
すると、だだだっと後ずさりして驚いた顔になり、
「こ、これって発勁じゃないの?寸勁…だよね!?」
…発勁を知ってるんじゃなかったのか。。(-_-;)
っつーか、この人たちから見ると、これも発勁に見えるということか。。。

あと、長拳のような型をやっていた人が、途中で旋風脚のような蹴りをやっていたので、僕も真似してやってみると、
「おお、高いっ!バネあるねぇ!」
と驚いて、
「よかったらウチにおいでよ。少しやれば絶対に大会でいいとこまで行けるよ!」
と誘ってくれた。
何でも大陸から有名な老師を招いているから、これからどんどんレベルが高くなるので、今からやっていけば絶対に大成できる、とのことだった。。

…まぁ、この2人の知識については、半年や1年程度のキャリアだったのだろうから、何とも言えない。
しかし、習っている先で「発勁」という術語をもって教わっていたのは確かだろう。

そもそも松田さんの“発勁”は、彼が学んだ“武壇”の発勁と言うこともできる。
つまり武壇オリジナルかも知れないということだ。
その“武壇発勁”と、「瞬発力」「強い力」などの“誰でも式発勁”は、他派が勝手に解釈して真似たものか、同じものとして元々伝わっていたものか、なかなか判断するのは難しい。
確かに他者の解説である程度わかってきている理屈でも、発勁を説明できなくはない。
しかしそれが松田さんの発勁と同じかどうかは、やはり判断できない。
穿った見方をすれば、松田さんが紹介した当時は、松田さんもあまり深く知らなくて、他の運動にも見られるような発力法である発勁を、師匠から言われたことを誇大解釈して大袈裟に書いただけかも知れない。
けれど、それは武壇の発勁が公表されない限りいつまでも謎のままだ。

ちなみにウチの流派に“発勁”は無い。
“発力法”はあるが、それが“発勁”と同じかどうかはわからない。
それに、僕もすべてを教わっているわけではないし、仮に教わっていても、それが発勁と同じかどうか…?
道場に初めて見学に行った際、先生に拳を密着させた状態から跳ね飛ばされて、
「もしかしてこれが発勁!?」
と思い、その後しばらくはそういう期待を持って稽古をしていた。
(※2007-01-03『<a href="http://doyotaichi.seesaa.net/article/30747358.html" target="_blank">道場見学の日の思い出</a>』参照)
そしてそれが、先生が「発勁」として学んだものではないということを知らされても、勝手に、
「同じものではないか?」
と考えていた時期もあった。
しかし、松田さんの言う「発勁」がわからない以上、決めつけることはできない。

もう一つ、ついでに言えば、おそらく陳伴嶺・王樹金系では、「発勁」という術語で発力法を説いてはいなかったのではないだろうか。
しかし、余所で同じ系統の太極拳をやっている団体、流派、個人の中には「発勁」という言葉を使っている人も居るので、その辺のことはよくわからない。。

発勁ネタはまだあるので、また改めて。。

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