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太極拳ってど〜よ!?

徒然エッセイ

Y崎との喧嘩 Part 2

投稿日:2007年8月20日

Y崎が何故、カズにちょっかいをかけるようになったのか、正直なところよくわからない。
気に入ったからなのか、気に入らなかったからなのか?
あるいは僕への対抗心からだったのか?

ともかく、気づいたときには、カズはY崎に振り回されるようになっていた。
例えば休み時間にカズを誘いに行くと、Y崎と2人でどこかに行こうとしている。
「あれ?どこ行くねん?」
と訊くと、Y崎が、
「オレとちょっと行くとこあるねん」
と、ニヤニヤしながら答える。
カズは黙ってうつむいて、Y崎に言われるままに相づちを打っている。
マサは訝りながらも、大雑把な男なので、最初は、
「まぁ、本人がY崎とどっか行く言うのやったら、しゃーないやろ」
という程度の反応だった。
ヨシは気が弱いし体力的にも虚弱なので、そもそも余所のクラスに行かない。
何かあっても他人の力にはなれない。

だがカズの態度がおかしいのは一目瞭然だったので、当然あとで本人に訊ねた。
すると、やはりY崎に無理矢理誘われたのだと言う。
「お前アホやな。それやったら何でオレの前でそう言わへんねん?そしたらすぐ終わった話やんけ」
しかし、カズはカズなりに考えていたらしい。
そのことで僕がK野やY崎と対立してもっと酷いことになるのを恐れたようだ。
もちろんそれは僕も同じだ。
特にK野は敵に回したくない。
だがこの件でK野と対立するようなことになるだろうか?
K野は気に入らないことがあると何を言っても無駄だが、真っ向から敵対しているわけでもなかったので、Y崎にはっきり言えば済むという程度に、僕は楽観的に考えていた。
…しかし。
事態はすでに思った以上に深刻になっていた。

僕は、早めに言っておくべきだと思って、次の日だったか放課後、一緒に帰ろうとする2人を呼び止めた。
そしてY崎に、
「カズを連れ回すにはやめたってくれ。オレらと遊びたくてもお前がつきまとうから恐がってるみたいや」
と言った。
Y崎はまた例によってニヤニヤしながら、カズを睨んで、
「そうなんか?」
と訊ねた。
このときはマサも、
「おい。はっきり言うたれや。嫌やったら嫌やとはっきり自分で言わんとあかんぞ」
と、カズの決断を迫った。
カズも深刻な顔でなかなか言い出せなかったが、ついに思い切って、
「hideたちと一緒に居る…」
と、Y崎を断った。
「おお、よう言うた!」
マサは大喜びでカズの肩に手を回してこっちに連れてきた。
Y崎は苦い顔で、少し黙って、
「まぁええわ。憶えとけよ」
と捨てゼリフを吐いてその場は去った。
この日はカズもほっとしたようで、久々に戻った笑顔で僕らに感謝していた。
そしてそのまま放課後、下校を促されるまで一緒に遊んで、別れた。

けれど翌日、Y崎との関係に変化は見られなかった。
またカズは連れ回されて、話しかけてもはっきりしない態度を取った。
そしてその次の日あたりから、学校を休み始めた。
家に電話して、お母さんが出ても、本人が出たくないと言っているとのことで、繋いでもらえなかった。
さすがに僕らも、思った以上に深刻であることを感じ取った。
先生にも相談したが、事態は好転しなかった。
そして、朝、数人で学校に来るように説得しに行った。
…おかしなものだ。
僕自身、学校をふけることがあったというのに、登校拒否している者の説得に行くとは…。
それにパート1でも書いたように、小学6年のときにカズの親や親戚からはいじめっ子として扱われたし、つき合いを拒否されていた。
その僕が、何度か登校を説得に行く内に、カズのお母さんからも頼りにされるようになった。

カズからすれば、小学校の頃に僕に引き留められて帰りが遅くなり、親に怒られて困ったときとは明らかに違っていた。
Y崎に対するカズの怯え方は普通ではない。
だから親にも相談しなかったし、お母さんもカズが登校拒否して僕らが訪ねて行くまで事情を知らなかった。
そしてその後も介入しなかった。
そんなことをすればもっと酷い目に遭うと思うほど、カズはY崎を恐れていた。
だから、僕にも助けを求めなかったのだ。
ちなみにカズは母子家庭で、弟が2人居た。
頼りになる男の家族は、近所に住んでいた叔父さんだけだった。
その叔父さんさえ、Y崎を怒らせたらどうなるかわからないと思えたのだろう。

説得は何日か続いた。
親しかった女の子数人も加わって、7~8人に増えた。
僕とマサを中心にカズの件で何度か遅刻する内、先生から事情を聞かれたが、少なくともこれについては理解が得られた。
実質、あまり力になってはもらえなかったが、
「お前たちの友達を思う気持ちはわかる」
と言って、遅刻扱いしないでくれた。
そして何度目かの説得で、カズも心を動かされ、ようやく登校することになった。
Y崎は先生からも一応の注意を受け、カズと距離を置くように言われた。
また、女子の何人かがY崎にかみついて、
「やめといたり~や!」
と、キャンキャン吠えた。
だが、カズの味方になっていた中心メンバーは、カズのクラスには居ない。
せっかく登校して来ても、また休みを繰り返した。

そんなある日、K野が僕を見かけて近づいてきて、こう言った。
「お前、Y崎とやり合うねんてな?」
僕はちょっと驚いて、
「え?そんなことにはなってないけど…」
と答えた。
「カズのことで揉めてるんやろ。Y崎はお前とやる言うてるぞ」
「…そうか」
K野は薄笑いを浮かべて、
「あいつは強いぞ。お前、またボコボコにされるな」
と言って去った。
僕は、事態が悪い方向に転がり始めている嫌な予感はあったが、ここではっきり告げられた気がした。
…それにしても「また」とは何だ。嫌なことを言うヤツだ。
(※2007/02/02『空手 Part 2』参照)

事態は行き詰まった。
打開するためには、Y崎ときっちりカタをつけるしかない。
それは感じていたのだが、勝てるかどうかの不安もあったし、勝てたとしてもその後の展開が読めなかった。
この時期にはK野も、Y崎のことは完全に一目おいていた。
その間のY崎の武勇伝は一つや二つではなく、Y崎はあっという間に恐れられる存在になっていた。
大体、Y崎に得があるとも思えないのに、何故、僕らに絡んでくるのだ。
僕自身も窮してしまった。

そして、ある日。
夜8時過ぎ、玄関のベルが鳴った。
家に居たのは僕だけだ。
とりあえず返事をすると、
「…あ、オレやけど」
と力無い声がした。
ドアの覗き穴から見ると、そこにはカズが立っていた。
(めずらしいな、こんな時間に…)
と思いながら開けてみて、驚いた。
カズは顔中腫れ上がり、疲労困憊で今にも倒れそうな状態だった。
僕は呆気にとられて、一瞬、何を言おうかにも迷って、まるでわざとらしい言い方で、
「何や、どうしたんやその顔?」
と言った。
「とにかく中に入れ」
と招くと、カズの服からはタバコの匂いがした。
飲み物を出して、傷薬や絆創膏で手当をしてやりながら、事情を聞いた。
「Y崎にやられたんか?」
カズは小さく頷いて、ほっとしたのか涙があふれ出した。

経緯は大体こうだ。
放課後以降、夜も連れ回されることは何度もあったそうだ。
その間のやりとりはよく知らない。
ただ、この日はカズも、帰らせて欲しいとしつこく食い下がったらしい。
Y崎は機嫌が悪く、小突かれた挙げ句にタバコを吸わされた。
その吸い方が不味そうで気にくわないと、何本も一度にくわえさせられ、さらに小突かれまくったそうだ。
そしてY崎の怒りは収まらないどころか激しくなり、すでに腫れている顔をまたぶん殴ったりした。
カズはあまりにも恐くなって、隙を見て走り出し、そのまま猛ダッシュで逃げて、僕のところまで来たというわけだった。

「なんちゅうヤツや…」
と言いつつ僕は、ジャガイモのようにボコボコ状態になったカズの顔が、痛々しくも、ある意味滑稽にも見えてしまって、Y崎への感情がすぐに湧かなかった。
いや、怒っていたのだが、どう表現していいのかさえわからないような感じで、返って冷めていた。
「それで、どうするんや?」
改めてカズに訊ねた。
「今日は逃げて来れたけど、またつきまとわれるやろ」
カズはうつむいて、言いにくそうにしながら、時間をかけて、
「今さらこんなこと言うのも何やけど…助けて欲しいねん」
と言った。
僕は、初めて頼りにされたことが嬉しかった。
ようやく言ったか、と思った。
「おお、当たり前やんけ。大体お前、そう言うのが遅いわアホ!」
と返すと、
「すまん…」
動かし辛い顔の筋肉をひきつらせながら、カズも嬉しそうにしていた。
「明日オレが話つけたるわ。そやから明日は学校出て来い」
僕はそう言って、しばらくして落ち着いた頃、カズを家まで送ってやった。

帰って来て一人になると、Y崎への怒りが沸々と湧き上がって来た。
「あのボケぇ…。ええ加減にせえよ。明日、場合によってはしばきまくったる!」
もう後先はどうでもいい。
このままなめられてオレもビビッてるわけにはいかない、と思った。
部屋の中で正拳突きをしたりして、一人で怒りまくっていた。

翌日、カズは登校して来なかった。

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