中国拳法、武術、格闘技など、徒然気ままに…

太極拳ってど〜よ!?

徒然エッセイ

真夜中の公園での喧嘩【1】

投稿日:2012年10月27日

T先生のところをお暇する前後、当時のことはめまぐるしくて時期をあまり正確に憶えていないのだが、僕は水商売に戻りたくなくて印刷会社に勤めたりした。
(※『一時復帰とその後』2009年07月26日)
その後は生活に窮してしまい、せっかく入居していたマンションも引き払って、しばらく親元に厄介になった。
印刷会社をやめてからは別の就職口を探したがうまく行かず、しばらく日雇いの力仕事をした。3~4ヶ月ほどだったろうか。。
(※『土木のおっさん』2008年04月24日)

そしてたぶんその頃だったと思うが、中学まで育った、後に初めて独り暮らしを始めたときに住んでいた、町まで、夜中に原チャリ(原付バイク)で飲みに行くことがあった。
大昔のことなので言うけれど、当然ながら帰りは酔っぱらい運転。
当時は飲酒運転に対しまだあまり厳しくなかったし、量はまーまー飲んでいたのだけど、酩酊状態になるほど酔うことは滅多に無かったので、大丈夫だと、自分では思っていた。
今思うと冷や冷やモノだ。。
(※よい子は決して真似しないように)

今までの話の流れからも判るように、この頃はド貧乏時代。
日雇いの力仕事は当然、日当としてもらえるのだが、一日あたり8千5百円だったかで、毎日仕事があるわけでも無かったし(例えば雨のときなど)、きつい現場のときは翌日起きられなかったりもしたので、実働20日くらいだったろうか…。
それでも、親元に厄介になっていたのだから、その時点でT先生のところに戻ろうと思えば戻れた。
まー月謝くらいは払える。
だが、そんな不安定な状況で、またお願いして通わせてもらうのは億劫だった。
僕としては、一番弟子だったT君から聞いた2つの技がどうにも気になって仕方が無かったのだが、また頭を下げて、僕1人だけなのに先生のお宅にお邪魔して教えてもらい続けるのも気が引けたし、もしまた何かあって通いにくい状況が発生したときは、さすがに気まずいどころではない。
それに…後になってはっきりとわかる気がするのだが、T先生にバカにされた態度を取られるのも嫌だったのだと思う。
僕がこんな生き方をしているのを知れば、はっきりと口には出さなくても、心の中では暗にバカにするだろう、そして「もう少しちゃんとした職について~」とか、あまりにもわかり切った当たり前なことを言われたりしたら、なおさらしんどい。
--というように。
そういう人だと、僕も心のどこかで理解していたのだと思う。
ただ、
この頃はまだ、僕はT先生のことを師匠として慕っていたところもあり、いつかもう一度ご挨拶させていただきたいと思っていたのだが、このあと就職しても、結局、自分の中で自分の生き方に納得できないまま過ごしていて、長い間連絡しなかった。
結局、ようやく連絡を取ってみようと思うのは、10年以上も経って、その間に色んな経験をして、そんな肩の力が抜けてからだった。

…話を戻そう。

行きつけの店があるその町まで、距離にして10キロくらい…か。
店は、水商売をしていてその町に住んでいた頃、夜中に自宅近くまで帰ってきてから時折寄っていた、ガラの悪いママがやっているカウンターだけのボロい飲み屋。
席は6~7席ほどで、出入り口は横開きのガラス戸が6~7枚。
各席の後ろがそのガラス戸なので一番端の戸以外は開け閉め、出入りが自由だ。
ガラの悪いことでは全国的にも有名な地域、しかも夜中から朝までやっているような安酒場だから、当然、客層も悪い。
貧乏ヤクザやチンピラが近所の警察署の刑事と飲みに来ていたりもする。
当時はそういうのもめずらしくなかった時代だ。
あとは仕事もせずにぶらぶらしているヤツらや、アル中、水商売連中、などなど。。
満席になることなど稀で、客数は大抵、常時1~3人程度。
防音などまったく無いのに、当時でさえとっくに廃れていたカートリッジ式のカラオケが置いてあり、深夜に演歌をがなる客も居た。
一度、夜1時か2時頃に覗いたとき、カラオケしていた水商売の30代くらいのおねーちゃんに、拍手をして、たまたま持っていたジョークグッズのオモチャのお金を「チップです」と言って、畳んだ状態で渡したら、感激してよく見もせずにポケットに直したのだが、次に会ったとき激怒されて、でかいガラスの灰皿を投げつけられたことがある。
泥酔状態の大トラ女。
さすがに女と喧嘩するわけにもいかず、ママからも「今日は帰って」と合図され、一目散に逃げた(笑)
(その次に会ったときには、謝ってきたので、こちらも謝って仲直りしたけれど…)
まーそんな店なのだが、、
店主であるガラの悪いママと気が合っていたので、何となく行き続けていた。

そんな中で、1人だけボンボンタイプのお客が来ていた。
年齢は当時30過ぎくらいだったと思うが、いつも深夜、大型犬(確かシェパードだったと思う)を2頭連れて、犬の散歩がてら寄るらしく、顔を合わせることが多かった。
犬はよくしつけられていて、主人が飲んでいる間吠えもせず待っているのだが、店の前に繋がれているのは厳つい。
常連は見知っていて気にもしないのだが、僕は最初、ちょっと嫌な印象を持った。
原チャリで通っていたこの頃には、すでに数年前から顔見知りだったのだが、僕はこの人が少し苦手なままだったので、あまり自分から話しかけることは無かった。
ママが言うには、近所にあるまーまー大きな何かの会社の二代目で、次期社長なのだそうだ。
割と大きな家に住んでいて、その界隈の飲み屋はみんなそのボンボンを知っているほど、近所では飲み歩いているらしい。
そして人当たりも悪くない。
いつもニコニコしているし、懐いてくる酔っぱらい連中にビールを奢ってやったりする。
いわゆるお殿様タイプなのだ。
(ガラの悪い地域の小さな界隈での、だが(笑))
それでも僕が好きになれなかったのは、おしゃべり好きで、一見、愛想良く話しているのだが、会話の中で他人を小馬鹿にしているのが見て取れるところが多々あったからだ。
例えば、何の話をするにせよ、相手がそれを知らない前提で、高みから教えてやるような口調で話す。
その癖、まとまりなく長い。そして諄い。
結局のところ、人に偉そうな口調で話すのが自然と身についているヤツでしかない。
そんなこんなが鼻につくのだが、しかし相手は年上。
親しいわけでもないのに、僕がそれをどうこう言っても仕方が無い。
なので、挨拶くらいはするし、ことさら無愛想にしたりもしないが、積極的に相手をしない、というように決め込んでいた。

だが、ある日のこと。

その日は店を覗いたとき客が居なくて、僕が第一号。
そのまましばらく暇なままだったので、ママと話しながら飲んでいた。
そこへガラッと戸が開いて、そのボンボンが入ってきた。
ボンボン(以下、便宜上「ボン」と呼ぶことにする)は、僕と離れた端っこに座ったが、どこかで少し飲んできたらしく上機嫌。
いつになく、めずらしく、色々僕に話しかけてきた。
ママは僕がボンのことをあまり好きじゃないことを知っているので、ちょっと苦い顔をしつつ僕の顔色を窺っている様子。
実は今までにも、むっとしたり、口論しそうになったことがあるのだが、その度ママに拝まれて退いていた。
ママにとってボンは上客なのだ。
でもその日、経緯は忘れたが、ついに僕はキレてしまった。
何となく憶えているのは、口論する中で、
「喧嘩の一つもできん癖に、人に偉そうな口を叩くな!」
みたいなことを言ったことだ。
それに対してボンが、やると言うのなら応じてやってもいい、但し自分も素人ではないから覚悟しろ、というような言葉を返してきた。
「ボンさん、やめとき。hideもカラテやってるんやから!」
ママが止めに入る。
(ママにとっては拳法も空手も区別はない)
ボンは、
「心配ない。hideくんも悪い男や無いし、男同士のことや」
と言った。
僕はその言葉でボンをちょっと見直した。
が、お互い、すでに引くに引けない状況になっていた。
それで、近くの公園に行って決着をつけようということになった。
公園まではぶらぶら、のんびり歩いて10分ほど。
心配げにしているママを尻目に、すぐ戻ってくるからと言って店を出た。
道々、他愛ない雑談をしながら歩いた。
端から見ればこれから喧嘩をする2人のようには見えなかっただろう。
「hideくん、空手どれくらいやってんの?」
「今やってるのは中国拳法と古武術やねん。空手は中学のときで緑帯程度やけどね」
「そうか。僕も空手は黒帯までは行ってないよ」
「どこの流派?」
「○○流やねんけど…」
「ほう。僕と一緒や。まさか○○の~?」
聞いてみると空手に関しては同じ流派、同じ支部道場だった。
通っていた時期はまったく違っていたようだが。。

公園内に入ると、身構え始めているボンを手で制する身振りをして、そこから距離を取って、2メートルほど離れて向き合った。
「喧嘩は先手必勝なんて言うけどさ、いきなり不意打ちのように手を出すのは嫌なんや。これくらい離れてからならええやろ? 来いよ」
ボンは下段払いの格好をして構えた。
左足が前で、左拳が左膝上あたり、右拳は腰に構えた、前屈立ち。
僕が習った空手流派の、最も基本的な右利き用の構えだ。
但しピシッとかたち通りにではなく、動きやすいように少し緩やかに構えていた。
「なんだ、こいつ弱いな」
僕は瞬時にほぼ勝利を確信した。
構え過ぎなのだ。
多少緩やかに構えているとは言え、速く動くには歩幅が大きい。
いや、それよりも何よりも、こんなオーソドックスで基本の基本みたいな構えを取ること自体、腕前も知れるし、喧嘩慣れもしていないのだろう。
(やっぱりお坊ちゃんだな…)
相手が見慣れたスタイルだったのと、大した腕前でも無かったので、僕は割と余裕だった。
開始間もない内に2、3発、軽く顔面にヒットさせ、ボンは口のあたりを切った。
しかし僕のパンチは当てているだけの手打ちに過ぎない。
相手を一発で屈服させるような一撃ではない。
何故、前に相手を一発で倒したときのような当て方が自在にできないのだろう?
こんな相手になら出来て当然なのに…。

勝利を確信したと言っても、お互い必死に動いている。
何が起こるかわからないし、油断は出来ない。
僕は優勢に立ち回ってはいるものの、どう倒せばいいか迷っていた。
僕が恐いのは捕まることだった。
ボンは僕より背が高く、体格的に一回り大きい。
お互いに構え合って向き合えば、よほど実力差が無い限りなかなか強打を当てさせてはもらえない。
余裕と言いつつ、僕は消極的に堅実な策を取った。
突破口が見いだせるまで、とにかく一発でも多く当てるということ。
「速いな。さすがにブランクがある僕では追いつけんワ」
ボンはそう言いながら息が上がってきている。
(少しずつ弱らせてきつい一発をお見舞いしてやる!)
僕は注意深く小刻みに手を出す。
そのとき、一瞬。
「あっ!」
僕は腕を取られ、捕まってしまった。
どういうわけだか、相手にタイミングを読まれたのか、気づいたら首に手を回されそうになって、2人とも転がってしまい、僕は必死に振りほどこうともがいていた。
ボンはここが最大のチャンスとばかりに、首に回しかけた手を、何とか締められるところまでハメようと必死。
僕は相手の右手の内側に手を挟み込み、てこの要領で何とかほどくことに成功、逃げるように起き上がり様、すぐ振り返って反撃。
その攻撃だったか、追いかけて出した拳だったか、よく憶えていないが、ようやくきつい一発がボンの顔面を捉えた。
ボンはほんの一瞬意識が飛んだように、後ろにひっくり返った。
僕は上からボコボコに殴ってやろうと駆け寄りかけたが、
「ま、待て。僕の負けや!」
と、ボンが叫んだ。

公園での喧嘩はほんの10分程度のことだった。
店に戻る頃にはボンの顔は腫れが増していて、ちょっと痛々しくなっていた。
ママは「大丈夫!?」とボンを気遣った。
「hide、お前は何ともないの?」
僕が無傷で涼しい顔で帰って来たものだから、無抵抗なボンを一方的に殴ったんじゃないかとも思ったらしい。

その後、ボンとは和解した。
ボンは緑帯か茶帯まで通っていたが、やめて久しいとのことだった。

別の日、ママから小言を食らった。
何でもボンは金持ちの息子だしこの辺では顔が利くから、その気になればヤクザを使って仕返しすることもできるとのことだった。
「ボンが気のええ人やなかったら、自分で喧嘩せんでも、お前を痛めつけることくらい簡単なことやってんで?」
…と。
そりゃまぁ…そうなんだろうな…。
僕は卑怯なこともせず正々堂々と勝つには勝ったが、何も無理にしなければならない喧嘩でも無かった。
そして、立場の違いを感じて、情けない気持ちになった。

(続く)

 

以下、コメント

旧ブログからの移転にあたり、掲載当時のコメントはこの下に“引用”のかたちで付けておきます。管理人からのレスは囲みの色を分けてわかりやすくしておきます。
なお、現在はコメント機能は使用しておりません。ご意見、ご感想等はメールにてお願い致します。

おっと、また少し間が空いているようですが(笑)、お忙しいのでしょうか。

気長に待つことにしますね。

師匠とのトラブルは後味が悪いものですね。

私も嫌な思いをしました。

でも離れた後、想像以上に酷い人物だったと判り、傷の浅い内に離れられて良かったと、今なら思えます。

人様の武術修行記というものは、自分ともリンクする部分もあるし、やはり興味深いものです。

その修行過程での人間関係図も大いに共感できる所もありますし、自分とは違う門派についての記述も、例え一部でも面白いものです。

さて、私もちょっと暫く覗けなくなるので、その間に続きがアップされていることを願っております。

Posted by ムツバチ at 2012年11月07日 17:33

>ムツバチさん

続きは編集中なので、今晩(深夜)か明日にでもアップできると思います。
今回の連載中、もっとも核心的な部分となります。
ただ、その前に、鍛試会関連のことと、鍛試会HPの日記をアップする予定です。

> 師匠とのトラブルは後味が悪いものですね。
>
> 私も嫌な思いをしました。

今回書いたことは、後々書くことのための序章部分です。
ムツバチさんも嫌な思いをしたのですね。
この世界、そういうことって多いですよね。
どのようなことだったのか、よかったら聞かせてもらえれば嬉しいです。
(ここに書くのがまずければメールででも)

> さて、私もちょっと暫く覗けなくなるので、その間に続きがアップされている
> ことを願っております。

足繁く覗いてもらえているようで嬉しい限りです。
暫くとはどれくらいでしょう?

年末は僕もバタバタするかも知れないので、今月の内にキリのいいところまで書こうとは思っています。

Posted by hide~☆ at 2012年11月07日 19:37

いえ、ほんの一週間ほどですよ~。

来週末には覗けますので。

機会を見て、メールでもしますね。

Posted by ムツバチ at 2012年11月07日 23:46

>ムツバチさん

了解です。
メールも楽しみにしています(^-^)

Posted by hide~☆ at 2012年11月08日 00:15

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