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太極拳ってど〜よ!?

徒然エッセイ

2つの突き Part 3

投稿日:2008年5月15日

“突き”を考えさせられた喧嘩の2つ目。

前項の喧嘩からそう遠くない頃…。
当時、2人の新地仲間が居て、僕を含め3人でよく飲み歩いていた。
その前に、
親と決別するかたちで家を離れ、独り暮らしを始めたとき、小学2年生から高校の途中まで過ごした大阪市内に戻って部屋を借りたのだけど、せっかく育った土地に戻ったのに、親しかった友人とはあまり会えなくなってしまっていた。
就職して忙しくなっていたり、他県の大学に進学していたりしたからだ。
そんなとき、地方から出てきている2人と知り合った。
2人はそれぞれ大学や専門学校に行っていたが、自力で生活しながら学校に通うことが難しくなって、休学や退学をして、酒を覚えてだらだら毎日を過ごしていた。
そういう意味では3人とも似た者同士だったわけだ。
最初はそれぞれ別々の仕事をしていたが、そのうち2人とも僕が居る北新地に来て働くようになった。
2人が新地に来た頃、僕は先生のところを離れて1年以上経っていて、その後、専門学校をやめてからは、先生のところに戻っても月謝に困るわけではなかったが、顔を出し辛かった。
水商売も当時はあまりいい目で見られなかったし、気持ちの面や他の事情もあって、
「もう少し落ち着いてから」
と思っているうちに、時が過ぎていった。。
そして結局、この2人とともに、すっかり新地の水に馴染んでしまっていた。

この頃、仕事が終わってから時折3人で飲む店があった。
早い時間は女の子を何人か雇っているのだが、経営が芳しくないらしく、深夜からは、料金を安くしてママが1人で朝まで営業していた。
ママは、もう顔さえ憶えていないが、30代半ばくらいだったろうか…?
僕らは店のママ(もしくはマスター)と仲良くなって飲むタイプだったので、1人で頑張っているのを見て、応援していた。
しかし、あるとき、、
1人で行った日だったが、僕はママと口喧嘩してしまった。
もう理由は憶えていない。
とにかく、ママが言った何かの言葉がきっかけで、僕は気を悪くした。
今まで仲良くしていたし、僕らなりに気を遣って飲んでいたので、最初は、それまでのつきあいを考えて、ママの言葉に意見したのだが、売り言葉に買い言葉のように返されて、次第に激しい口論になった。
そのとき僕は、手振りを交えて興奮して話すうち、目の前にあったビールに手が当たってしまった。
ビンの中にはまだビールが残っていたが、勢いよく転けてカウンターの中に落ち、割れてしまった。
わざとではなかったが、ママも興奮していて、
「何すんのよ!」
と声を荒げた。
「アホッ!当たってしもうたんやんけ!見てわからんのか!」
ビール瓶を割ってしまったのは悪かったが、僕もさらに怒った。
(男ならぶん殴ってる!)
と思うほどキレかけ寸前になっていた。
「もうええわ!帰るわ!ナンボや?」
「お金要らんわ。帰って!」
その言葉にさらにむかっと来て、僕は紙幣をテーブルに投げつけて席を立った。

店内には他にアベックが一組。
僕らが居たカウンターとは離れたボックス席でいちゃついていた。
いわゆる“アフター”。
どこかの店で飲んで、そこの女の子を連れて来ていたのだろう。
男は30代後半くらいで、スーツを着ていたが普通のサラリーマンではないようだった。
つまり、勤め用のスーツというより、ちょっとおしゃれな感じの仕立てで、独立して何かをやっているという感じに見えた。
背や体型は僕と変わらなかったと思う。
僕がドアに向かうとき、その男が声をかけてきた。
「おい、お前。ママにその口の利き方は何や!」
僕は一瞬そっちを見たが、無視して出ようとした。
男は立ち上がりながら、
「待て。ママに謝らんか!」
ドアに手をかけて出ようとしていたが、イラッときて、
「うるさい!あんたに関係ないやろ!女の前でええかっこしたいか知らんケド、事情もわからず口出しすんな!」
と返した。
そして僕はそのままドアを開けて出たが、
「なにぃ!」
と男は追いかけて出てきた。
「待たんか、コラ!」
肩に手をかけようとしたのか、触れようとしたので、僕はその手を払って、
「やめんか!来んなアホ!」
と怒鳴った。
男はムカッとなって、
「若僧が偉そうに!しばくぞコラ!」
僕は即座に、しかし少しトーンを下げて、
「やれるもんならやってみアホ」
と、捨てゼリフのように返して、ドアからすぐのところにあるエレベータに向かおうとした。
その瞬間、男が掴みかかって来た。
実は、少し距離を稼ぐのと、誘う意味で、エレベータに向かうフリをした。
しかし自分でも意図していなかったほど素直に体が動いて、振り返りざまに左拳を顔面めがけて振り抜いていた。
このとき、男の手をどうしたのかよく憶えていない。
体をずらして外した(避けた)のか、もしかしたら左手で払ってそのまま握った左拳を出したのかも知れない。

そのあたりから世界がスローモーションのようになった。
よく交通事故のときにこういう経験をするという。
思い当たる人も多いのではないだろうか。
僕も、事故でもそういう経験をしたことがあるのだが、今までの喧嘩でも何度かこういうことが起こった。
あとで思えばそんな気がするという記憶の錯誤なのかも知れないが、とにかく感じたままを説明するしかない。

(あれ?…当たった?)

…というくらい、あまり感触が無かった。
男は派手に後方に倒れるのではなく、上半身だけがくねくねと前後に波打つように崩れ落ちていった。
そして男が倒れた途端、世界が元に戻った。
(やばい!)
初めて経験する相手の倒れ方を見て、頭が一瞬パニックになった。
思わず僕は走り出したが、混乱してエレベータと反対側にあった階段を、上階に向かってしまった。
一旦そっちに向かった以上、引き返しにくい。
そのまま上ると、後方で、
「きゃーっ!〇〇ちゃん大丈夫!?」
と、男が連れていた女が騒ぐ声が聞こえた。
(…しまった)
これほど混乱したことはあまり無い。
ひとまず上まで行って、気配をうかがった。

とにかく気を落ち着かせようとした。
もし上に行ったのを見られていたら、男が追いかけてきてもう一戦か…?
もしくは、このまま居て誰かを呼ばれるとまずい。
今さらエレベータを使うのはリスクがある。
狭いところでは、非力な僕は不利だからだ。
それならもう一戦交える覚悟で階段の方がいい。。
しかし相手は大丈夫なのか…!?

少しの間気配をうかがったが、静かなままだった。
(とりあえず相手は今一人だし、堂々と降りてやろう)
意を決して僕は階段を降りた。
すると店のドアは閉まっていた。
これ幸い、僕はそのまま通過して階段を降り、ビルを出た。
だが男のダメージが気になったので、救急車が来ないか、15分ほどビルの近くで様子をうかがった。
それに、もし警察が来るようなことがあったら店に戻ろうと思っていた。
行きつけの店での喧嘩だからごまかせない。
翌日になって仕事に支障を来すより、その日のうちに済ませる方がいいからだ。
だが何事もない様子だったので、この日はそのまま帰った。

またもやつまらん喧嘩…。
我ながら何をやってるんだろう…と思った。。

翌日、僕は口喧嘩したママに電話した。
ママは冷静になっていて、
「私も悪かった。ひでちゃんたちよく来てくれてて助かってるのに、逆ギレするようなこと言って…そのせいであんな喧嘩まで起こって…」
と謝ってくれた。
意外だったが、それよりも相手がどうなったのか気になって訊ねた。
男は、倒れた直後は自分で起き上がれず、女2人で抱きかかえて店に運んだが、意識はあったらしい。
そして間もなく元気になって、しばらく酒を飲んで帰ったそうだ。
顔は、少し腫れていたが暗くてよくわからなかったという。
「何処の誰や?」
という話も出たが、ママは、
「何度か来た客だけど知らない」
とごまかしたそうだ。
…まぁ、かばってくれたというより、それ以上面倒が起こるのが嫌だったのだろう。

謝ってはくれたが、僕はもうその店には行かなくなった。
新地仲間の2人はその喧嘩の話を聞いてからも行き続けていたが、しばらくして、
「hideが怒るのも解るぞ。あのママ解ってないこと多いワ」
と言って、行かなくなった。

ちなみにこの新地仲間の内の1人は極真空手経験者だった。
別項でまた書くと思う。

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