中国拳法、武術、格闘技など、徒然気ままに…

太極拳ってど〜よ!?

徒然エッセイ

第二期修行10:昔習ったことからの変化

投稿日:2017年5月16日

実はこの前書いた『煙に巻かれやすい中国拳法の技のお話』(2017/04/28)の続きを書こうと思っていたのだけど、第二期修行の話も前回から日にちが経っているので、こちらを優先することにした。

ちなみに技の話は上記の記事のときにも、“ボディくん”たちを使って説明しようと思っていたのだけど、男性人形と女性人形の体の大きさが違うため、技のポーズをつけにくくて、面倒になって省いてしまった。
で、その間、amazonで、前から欲しかったボディくんのグレータイプが安く売られているのを見つけて注文したのだが、届かなかった。
どうも詐欺業者にひっかかってしまったらしい。
到着予定を過ぎても届かないので問い合わせたのだが、応答が無く、出品者の評価欄を見ると、注文した人からの文句が複数書き込まれていた。
それで、amazonに保証を求める申請をした。
ボディくんはその後、改めて楽天内の量販店で注文した。
色は、欲しかったグレーではなく、この春に発売されたオレンジだが、絵の資料用としても男性人形がもう一体欲しかったので。
こっちは注文から2日で届いた。近々また技の話も書く予定だ。

――さて、T先生との稽古を再開して数ヶ月間のことについては、前回で一旦区切りをつけたのだけど、いきなり飛ぶわけでも無いので、時期が重なる話は今後も出てくると思う。
今回は夏頃のことを書くが、稽古を始めた頃のことも、やはり多少絡む。

あと、一つ訂正しなければならないことがある。
T先生と画像や動画を見るために、僕がノートパソコンを持って行っていたことは、今までにも何度か書いた。
ただ、最初の二、三年は、持って行っていなかったかも知れない。
僕が外出時に使っていたノートパソコンは、ヒューレットパッカード社の『HP Mini 1000』という機種で、最初から使っていたつもりになっていたのだが、調べてみるとこれは2008年に発売されたモデルだった。
その前に何を使っていたのか、いや何か他のノートを使っていたのかどうかも含めて、どうにも思い出せない……。

僕の中で記憶にあるのは(あるいは思い込んでいるのは)、靴置き場のベンチで待つ間、ノートパソコンを触っていれば、何もしないでいるよりは気が紛れて時間潰しが出来るのだが、当時のパソコンはバッテリーが2、3時間程度しか保たなくて、動画を観るとさらに早く減るため、我慢していた、というものだった。
しかしノートパソコンを持っていくようになったのが2008年以降で、それまで他の機種を使っていなかったのであれば、もっと後の話になってしまうので、時期や書き方を変えなければならない。
そんなわけで、ノートパソコンについては記憶が曖昧なので、今回、T先生と動画を観ていたときのことを含めようとしていたのだが、また別で書くことにする。

――さて、夏。
稽古開始が年始早々からだったから、ようやく半年以上。
この頃から時々、講堂以外の場所で稽古をするようになった。講堂が何かの事情で使えないときとか。

改めて見取り図。
(※2階にある部屋や場所はピンク色。それ以外は1階)

講堂が使えないときは、剣道場か柔道場。
この二部屋は学級教室と同じような広さで、もしかしたら元は普通の教室として使われていた部屋を改装したものだったのかも知れない。
放課後は主に、剣道場は卓球部が、柔道場は柔道部が使っていたようだが、僕が行く日には誰も使っていないことが多かった。
また、僕は基本的に週イチ、大抵水曜日に行っていたので、それ以外の日のことはよくわからないが、剣道部は無かったのかも知れない。

ちなみに、この学校で稽古をしていた何年かの間に、上記三箇所とも使えなかったときがあって、T先生が授業をしている教室と、図のシャワー室で、稽古をしたことがそれぞれ2、3回ずつあった。
ちょっと驚いたのは、授業を行っている教室というのが、そこだけが特殊だったのかも知れないが、普通の教室よりずっと狭く、三分の一くらいの広さだったことだ。机や椅子も数人分しか無かった。
視覚障害者を始めとして何らかの障害がある人が通う学校なので、クラスは少人数制だったらしい。
場所はこの見取り図で言えば「校舎1」の2階、左上の奥あたり。
その際、職員室らしき部屋の近くを通ったので「ここかな?」と、職員室の場所の大体の見当がついたわけだ。

講堂での稽古は、図の講堂の左下隅あたりでやることが多かった。
図には描かれていないが、そのあたりの窓の外に歩道橋があった。
ある日、まだ肌寒かった頃だったと思うが、一人の生徒が歩道橋の上を元気よく駆けていくのが見えた。
「あれ? 先生、あの子は目が見えているんですか?」
「うん。みんなが全盲というわけやないからな」
「そうなんですか。僕はてっきり、全盲の人ばかりかと」
それでも確か視覚障害者は、全盲の人や、全盲に近い人、やがて全盲になると言われている人が多いと聞いた気がする。
僕は高校生のとき、この学校の近くを走っている私鉄で通学していたので、白い杖を持った生徒をよく見かけていて、視覚障害者が通う学校があるとは聞いていたのだが、まさかその学校にお邪魔するようになるとは。
そして、同じ2階、柔・剣道場側の上にはもう一つ講堂(体育館?)があって、時々バスケットボールのドリブル音が聞こえていたのだが、多少は目が見える人もいるというので納得だった。
ちなみに、先に書いた卓球部もそうだが、野球部などもあったらしい。
最初は、生徒がクラブ活動をやっているのを見かけたことが無かったので、球技どころか運動部があることも知らなくて意外だった。

歩道橋の上を走って行く生徒を見かけてからしばらくした頃、三人組の生徒が時々、僕らの稽古を覗きに来るようになった。もしかしたら歩道橋の上を走っていたのも、その中の一人だったのかも知れない。
人数はたまに増減していたが、面倒なので「三人組」として書く。
三人組は中等部の子らで、みんなまだ幼さが残る顔立ちだった。
「T先生、何してんのぉ~?」
僕らの稽古に興味があるというよりも、T先生を見かけて、暇つぶしにからかいに来ているようで、親しい先生に甘えて絡むような感じで、憎たらしいというほどの態度では無かった。
T先生は、良く言えば温和な、悪く言えばちょっと頼りない口調で、
「えー。武道の稽古してるんやん。すること無かったら早よ帰りや~」
というような受け答え。
生徒たちは見慣れない僕に遠慮している感じではあったが、何度か来る内には、時にはしつこくT先生に絡んでいた。
T先生は、邪魔だと言いながらも、毎回、優しい口調で返す。
(オレに対するのとは全然違う対応だなぁ……)
僕は心の中で苦笑。
だがT先生は、単に「生徒には優しい」というのではなく、どうやら生徒にあまりきついことを言えなくて、なめられているようでもあった。
まあ、“モンスターペアレント”なんてのも問題になっていたから、それだけ学校の先生も、肩身が狭い立場になっていたのかも知れない。
その鬱憤のはけ口が、こちらに向くのは勘弁して欲しかったが……。

講堂以外を初めて使ったのは、剣道場が先だったと思う。
隅っこに折りたたみの卓球台が2、3台置いてあって、剣道の用具はあまり置いていなかった気がする。
講堂と同じように板の間なので動きやすいし、広さもほどほどで講堂よりもこっちの方がいいのにと思っていたが、T先生としては、離れた位置にある講堂の方が、校内の人にあまり見られないで稽古できると思っていたのかも知れない。

柔道場は、埃まみれで汗臭く、畳はぼこぼこに波打っている状態で、ほとんど掃除も手入れもされていない感じだった。
そんな場所なので汚れてしまう上に、心持ち柔道場のすっぱい匂いがついてしまうような気になってしまうのだが、それはそれで学生の頃に戻ったような気持ちにもなるし、思い切り転がる稽古が出来るのは嬉しい。
(受け身の稽古なんて何年やっていなかっただろう……!)
T先生も、僕を相手に柔(やわら)の技を試したかったらしく、他の場所が空いていても、そのときの気分で柔道場にすることがあったようだ。

柔道場での稽古はまた書くとして、今日のお題。

初めの頃、型稽古の流れでだったと思うが、「三尖相照」の話が出た。
確か僕自身も、一応型の上では三尖相照を意識しているが、必ずしもすべての姿勢や動作に当てはまるわけではないと思っていて、実際にはどうか、ということを質問したのだったと思う。
僕としては、「三角」を形作るのは意識した方が良いが、入門書にあるような「三尖相照」は、必ずしも必要が無いと思っていたのだ。
T先生は軽く笑って、こう答えた。
「三尖相照なんて、ウチではまったく関係あらへん! まったくと言っては言い過ぎかも知れへんけど、ほとんど気にせんでええで!」
僕はちょっとおかしかった。昔はこれが大事だと言っていた癖に、と。
「へぇ……。そうなんですか」
「それどころか、沈肩墜肘もあまり関係ない」
「え? 沈肩墜肘も、ですか!?」
「肩や肘を上げることで使える技もあるしな」
そう言って、少し例を示してくれた。
「……なるほど」
昔にも、最初に習ったことと逆のことを後で教えられたりしたことがあったものだが、改めて、『中国武術って嘘が多いな』という気になった。

ちなみに「沈肩墜肘」については、肩を落とし、肘が上がらないようにするのは、他のスポーツなどでも一般的に言われることなので、基本的にはそれでいいと思う。
ただ、それに拘ると本質を見失うということだ。

それから、これも型を見てもらっていたとき。
型が最初の楼膝拗歩に差しかかると、
「手は、肩の前な」
――と言われた。
「えっ!?」
これは、ちょっと意外だった。
「突きにしても、掌打にしても、剣を振るう場合もそう。肩の前!」
そう言ってT先生は、楼膝拗歩や、突きの動作や、剣を振るう動作などを、身振り手振りで示してくれた。
もしこれを僕より早くから習って知っている人が居たらお恥ずかしいが、「肩の前」というのは、それまでの僕にはまったく念頭に無かった。

ボディくんでポーズを作って見せよう。

細かいところはきちんとポーズをつけられなかったので、一応説明しておくけれども、後ろ足の踵が上がっているのはNGだ。これは基本的に踵が地に着いているものとして見ていただきたい。
(※実際の動作上で、場合によって少し浮いてしまうのは致し方ないが)

――で、「肩の前」の説明だが、(1)は太極拳の楼膝拗歩、(2)は拗歩による突きだ。
拗歩突きは、中国流に言えば「拗歩捶」かな?
「捶」というと縦拳のイメージがあるけど、どうだったっけ。
ウチはあまり中国流の言い方をしないので、型の中の技名以外はよくわからない。その技名も日本語読みだし。
まあ、とにかく――
拗歩突きは、細かい差異はおいて、空手の「逆突き」、ボクシングの「ストレートパンチ」と同様の技だ。
大抵の武術・格闘技では、腰を捻って、自分の中心線上に拳が来るように突き出すだろう。しかし日本でも中国でも古流系の一部では、腰を捻らず、肩の前に出すそうだ。
今では少数派かも知れないが、そうだとすればウチはその少数派ということになる。

ちなみに、(2)の画像は、引き手の脇が空いていてちょっと垂れ下がっている。撮影のときに気づかなかったのだが、これは基本的に(3)のように乳の横につけるようにする。
引き手の位置については、武術や流派によって、当流のように胸のあたりだったり、腰のあたりだったりするが、これについては、また別の機会に解説しようと思っている。

(4)は、少林拳や、最近の空手によく見られる、腰を回し、上体を半身にして、肩の前ではなく、自分の中心線上に拳を出す突きだ。
中国拳法の場合、拳種によっては、もっと半身になったり、あるいは真横になって打つ場合も見られるが、ウチではそういう打ち方はしない。
心持ちわずかに半身にはなるが、腰はほとんど回さない。そして拳は肩の前。ただし肩はぐっと前に出す。
どちらがいいとか悪いとかは言わないが、僕的には、この姿勢での打ち方で打撃力が劇的に上がった。
まあ、この説明だけでは不十分だし、他の打ち方に慣れている人がちょっとやってみたくらいでは、どう劇的に変わるのかは、解らないだろうけど。

ところで「肩の前」については、これよりずっとあと、僕のところに習いに来ていたK君の太極拳を見て「おやっ」と思ったことがあった。
K君の楼膝拗歩、肩の前に掌があったのだ。
彼は、同じ王樹金系の正宗太極拳を、他派で一年学んでいた。
「ストップ! その姿勢のまま止まって。楼膝拗歩の完成姿勢やけど、手の位置はどう教えてもらった?」
「えっ? ……ええと、肩の……前?」
「ほう。そしたら、その意味とか、打ち方とか、教えてもらったか?」
「……いいえ」
まあ実際、ミット打ちをしても最初は全然ダメダメだったし、型を演武する上で「肩の前」と教えてもらっていただけだった。
それでも、僕が若い頃には、腰を回して、体の中心に出すように教えられていたので、ちょっと意外だった。
驚いたのは、そこだけだったけれども。

また、「楼膝拗歩」に限って言うなら、改めて動画や画像を探して見てみると、肩の前に出している人も割と見かけるので、その人はそう教えられているのだろう。意味を教わっているかどうかはわからないが。

それから「腰を回さない」ということについて、さっきもちょっと触れたが、ウチでは腰をほとんど回さない。
長い距離で、大きな動作で打つ場合はいいかも知れないが、短く小さく打つときには、腰を回すと威力が出にくい。
もちろん手だけで打つような、いわゆる“手打ち”になってしまってはいけないし、腰を使わないということでは無い。
当流では腰を「回す」のではなく、腰を「入れる」使い方をする。

――これらが、武術を再開して、若い頃に習ったことと違っていて、最初に驚いたことだ。
いや、後になって振り返れば、驚きの変化であり、今までやってきたことと比べて革命的、劇的な変化だったとも言えるのだが、最初はただただ戸惑うばかり。
今までの癖がなかなか抜けず、どう強打に繋がるか解らなくて、しばらくは姿勢や動作の矯正に勤しむ日々が続くのだった。

細部は説明できないが、今後もアウトライン的なことは書くつもりだ。
入門書のようなものを書く際には、ここで書くよりもう少しは詳しく書くと思うけれども……。

ひとまず今日はここまで。

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