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太極拳ってど〜よ!?

徒然エッセイ

武術としての太極拳

投稿日:2007年1月9日

太極拳を一定期間学んだ経験がある人なら、太極拳が優れた術理で出来上がっていることは理解されていることだろう。
しかし、太極拳の技をどう使うのかということや、果たしてどの程度強いのかということについては、意見が分かれるところだ。

ともかくここは、あくまでも僕の個人的意見。

端的に言って、太極拳の技は使えると思う。
但し、どんな相手、状況においても、ふわりと受け流してきつい一発をおみまいするというような、太極拳で理想とする使い方ができるのかと言えば、それは容易ではあるまい。
アトラクションでやってみせるような技は、それなりの条件下でのことだ。
「じゃあやってみせようか」
という血気盛んな人は居るかも知れない。
そして、僕のように大したことない者が相手なら技をかけられるかも知れない。
しかし、何らかの格闘技をやっていてある程度以上の腕前に達している者を相手に、圧倒的立場で技がかけられるような人は、武術としての太極拳をやっている人口の中でも、かなり少ないだろうと思う。

また、太極拳に限らず、大きくて力が強い者に、それが格闘技経験の無い素人でも、狭い場所でいきなり掴まれ殴りかかられたとすれば、どれくらい対処できるだろうか。
空手や柔道をやっている人なら、そういう怖さを知っているだろう。
あるいは、自信を持っている場合は、裏打ちされるだけの修練を積んでいて、それ相応の力があればこそだ。
太極拳をやっている人の場合、そういう現実を踏まえないで、型が上手くなり、推手や約束組手で後輩より優位に立てれば、それで何とかなると思っている人が多い気がする。

確かに、太極拳や中国武術には、洗練された身体操作に対する考え方があって、相手の力を巧く受け流したり、利用したりしながら、小さな力で大きく弾く技術がある。
そしてそれを体得することを目的としている。
けれどそれは、太極拳や中国武術だけのものだろうか?
例えば太極拳は、それが顕著だというだけで、他のあらゆる格闘技でも、大なり小なり、多かれ少なかれ、そういった技術はあるのに、何故、太極拳を習得すれば他を圧倒できると言えるだろう?
しかも、他の格闘技ほどしんどい思いもせずに…!?

もちろん、太極拳には太極拳のしんどさがあるし、技の質や練習の目的が違うから、他から見れば異質でも確かな訓練をしているのだという理屈は解っている。
ただ、それでも、もし、
「痛い、辛い、しんどい、苦しい」
…などが、ほとんど無いようなところで習っているとすれば、それが武術として成立するのかは疑問に思ってしまう。。
昔の人は野良仕事や長距離の徒歩による移動で鍛えられていたし、兵士なら鎧などを着て戦ったりしたのに、何故、太極拳なら、鍛えなくても、力が無くても、使えると思うのだろう?
自分よりずっと巧い人に、ひょいと難なく技をかけられて、それだけでそう信じてしまったとしたら、それは早計では無いのだろうか?
太極拳が上手くなるということと、強くなるということが、どれくらい重なるかは、課題として持っておいた方がいいと思う。

また、太極拳は、理論が高等だから、使えるようになるまでに時間がかかるというのも、一般によく信じられている。
けれど、これは松田隆智さんも書いていたと思うけど、動乱の歴史を繰り返してきた中国で、悠長に修行しなければならない武術があるわけがない、と考える方が自然だ。
楊家太極拳が普及し、簡化太極拳などが出来て、武術色が失われたと思われたのは、激しい鍛錬を省くようになったからだという見方もある。
しかしそれは表面上であって、ちゃんとした鍛錬を行っているところもあるのではないだろうか。
そしてもし、今のように時間をかけて型や推手ばかりをやって、
「とりあえず10年はかかる」
などと言っているとしたら…。
そう考えると、人は恐ろしい…という気もしてくる。。

もちろん、師の教えを守って一つ一つをこなしていくことも大事だ。
けれど中国武術の世界は秘密も多い。
奥のことや秘伝をどれほど教わることができるだろう?

個人的なことを言えば、僕は、昔も今も恵まれていると思っている。
それでも、全部を教えてもらえるとは思っていないし、自分にそれだけの下地や資格があるとも思っていない。
だから秘伝とか全伝とかに拘るのでなく、納得のいく技術をある程度教わることができればそれでいい。
…まぁ、この「納得」というあたりが、結局は今公開されている範囲からすれば、幾らか奥のことになってしまうのかも知れないけど。。

ところで。。

僕はあえて、自分が愛好している太極拳へのアンチテーゼを立てている。
僕が書いていることは当然のように解っていて、
「そんなことくらいはとうに踏まえてやっている」
という人はともかく、太極拳を、
「摩訶不思議な技術」
「気で相手を飛ばす」
「力は要らない」
「筋肉は鍛えなくていい」
---などと思っている人は、そういう考えを変えろとまでは言わないけれど、参考にしてもらえれば幸いだ。
余計なお世話と感じる人は読む必要は無いし、他で参考になることを適当に自分で取捨選択すればいい。

ともかく、現実を認識し、あらゆる可能性を模索し、踏まえて、工夫する先にこそ、武術としての太極拳の姿があるのではないかと思っている…。

そして、発見や工夫のためには、一旦、自己を否定し、批判的立場から見てみることも、大切な作業の一つではないだろうか。。

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