中国拳法、武術、格闘技など、徒然気ままに…

太極拳ってど〜よ!?

徒然エッセイ

2対1 Part 3

投稿日:2007年10月7日

この少し前、S田に警告したことがあった。
2人に対する我慢が限界に達しつつあって、ふと廊下でS田を見かけたとき、ダメモトと思いつつ、呼び止めた。
S田は、N浦やK戸と仲間同士なのだから、ヤツらが僕に嫌がらせを続けていることを知らないはずはない。
おそらく一緒に居るときには僕の陰口を叩き合ったりもしているだろう。
しかしS田は中学のときの僕を知っているし、Y崎との喧嘩の目撃者でもある。
その気になったら2対1でも僕の方が強いことくらい想像がつくはずだ。
多人数で僕を袋叩きにすることは可能でも、そこまでやってしまったら大事だし、当事者はみんな何らかの処分を喰らうことになる。
場合によっては退学。
「お前、オレがキレてしまったらどうなるか判ってるやろ?」
技術系の学科に入って3年間どうにかやってきたのに、卒業までもうすぐのところでそんな喧嘩をして何になる?
誰も得をしない。
S田は黙って目を伏せていた。
「あの2人に言っとけよ。オレにつまらんちょっかいかけるのはやめとけと」
S田は最後まで目を合わせず、
「…わかった。言うとくわ」
と言って、教室に戻った。

そして、前項の終わりに書いた、2人との経緯。。
おそらくS田は何も言っていないだろう…。
僕はあのデコボココンビよりも、返ってS田の方に腹立たしさを覚えた。

学校を3~4日休んでいた間、N浦とK戸とのことをまったく忘れていたわけではなかったが、そんなことはどうでもよかった。
熱がひいても彼女のことで気持ちが萎えたままだった。
でも単位を落としかねないので学校に行くしかない。
登校すると早速、N浦とK戸がドタドタと教室に入ってきた。
「おい!お前、ナニ逃げ回っとんのじゃ!」
僕は面倒臭そうに
「はぁ?何のことやねん?」
と返した。
「何とぼけとんのじゃ!この前オレらとやる言うとったんとちゃうんか!」
「エラそうに吐いとって、逃げてズル休みか!?」
もちろん忘れていたわけではなかったが、
「ああ、そうやったな。忘れとったわ。熱出してたしな」
と、別にお前らなど眼中に無かったという風に言ってやった。
「ほんなら今日やるんやな!?」
「別にええよ、それで」
もうどうでもよかった。
「よぉし。今日は逃げんなよ!」
「5時限目は自習やから、オレらの教室来いや!」
何でこっちから行かなければならんのかというやりとりもあったが、それもまた面倒臭くなったので、結局行くことにして、2人は戻っていった。
同じクラスのS中グループの連中も何人かそれを見ていて、
「逃げよう思っても無駄やからな!」
と念を押した。
前にも書いたが、同じ科は2クラスしか無い。
3年のときN浦、K戸、S田は隣のクラスだった。
このとき、S中は居なかったが、同じクラスで席が僕の真後ろだったので、授業が始まる前には席に着いた。
だがS中は特に何も言わず黙っていたように記憶している。

このとき、実は少しほっとしていた。
最悪の事態は避けられるかも知れないと思ったからだ。
最も危惧していたのは、学校外でやり合うハメになることだった。
それこそ何が起こるかわからない。
しかし、自習時間にケリをつけようというのなら、相手側もあまり大事にしたくないのだろう。
ただ僕は、ここまで来た以上、話し合いだけでシャンシャンになるとは思っていなかったし、そのように持っていくつもりも無かった。

それにしても、うまい具合に喧嘩当日に自習…。
Y崎のときとそっくりだと思った。
何だかこういうときに限って同じようなパターンになるとは、おかしなものだ。
この日の5時限目が何故2クラスとも自習だったのか思い出せない。
両方が自習になるとしたら、体育の先生が休みだったのだろうか…。

昼休みまでに、僕がN浦とK戸を始めS中グループの連中と揉めることは幾らか知れ渡ったようだ。
H山も、隣のクラスだったが、心配して声をかけに来てくれた。
でも僕は、
「いやいや大丈夫。あんなヤツらに負けへんよ」
というように余裕をかました。
迷惑をかけるわけにはいかないと思っていたのもあるが、経験的にあまり助けてもらえたことなど無かったので、アテにできないという気持ちもあった。
そして5時限目。
先生が来て自習を告げて職員室に戻ると、僕は隣の教室に向かった。

教室は教壇や黒板がある側にしか出入り口が無い。
入ると、後ろの方の机を少し移動させて場所を空け、S中グループの連中がたむろしていた。
何人かはN浦とK戸の周りで壁にもたれて立っていて、あとの者は机の上や椅子に座って、その場を取り巻いていた。
「おう!早よこっち来いや!」
と、デコボココンビが手招きをした。
何が起こるか知らない者は、自分の席で息を呑んで見守っていた。
僕と同じクラスの者も、見物に少しずつ入って来た。
僕は連中の方に歩いて行きながら、先手を打ってN浦とK戸に、
「お前ら2人とオレとのことやんな?」
と言った。
連中の仲間の内の誰かが、
「んなモン関係あるか!」
というようなことを言ったが、デコボコのどちらかが、
「ええってええって。こんなんオレらだけですぐ済むから」
と、余裕を見せて、凄んだヤツをなだめた。
「そやそや。こんなヤツみんなでやってもうたらカッコ悪いだけやんけ」
と言う者も居た。
ひとまず、いきなり多人数相手は免れた。

2人と対峙すると、お決まりのように生意気だのなめてるのというイチャモン。
僕があまりに落ち着き払っていたので、グループの者はそれを奇妙に感じながら様子を見ていた。
たぶん周りで見ていた生徒たちも同様だろう。
N浦は、
「コイツ、余裕やのぉ」
と、仲間の方を見て笑いながら言った。
机の上で体育座りのように膝を抱えて座っていたN瀬というヤツも、
「何でコイツこんなに落ち着いてんねん?余裕あんねん!?」
と呆れるように笑った。
連中は僕の態度がよほど意外だったのか、量りかねているようだった。
おそらく最初は、みんなで囲んで恫喝して、小突き回して、最後に土下座でもさせて終わらせるつもりだったのだろう。

その間、カメラのシャッターを切る者が数人居た。
写真部の連中で、ニコンやキャノンなどの高級カメラを毎日持って来ていたのだが、人が窮地に陥っているところをバシャバシャとシャッターを切って撮影し始めた。

しばらく言い合ううち、膠着状態をやぶってN浦が襟首を掴みに来た。
僕がそれを払うと、ムキになってさらに襟や手を掴みに来たので、それを払ったり、外したりした。
N浦は僕より背が低くて太っているので、リーチが短いし、スピードも遅い。
なかなか掴めずいるのを繰り返すうち、ぶん殴ろうとする手を出すのもどこか躊躇していたが、揉み合っている内に一度パンチを出してきたので、僕はその手が伸びる前に押さえるように受けて、お返しに一発お見舞いした。
本来ならそこで畳みかけるように連続してぶん殴るところだが、K戸や周りを警戒していたので一旦止まった。
N浦は僕に殴られた右頬の口元あたりを押さえて、
「痛ぁ~」
と低く唸った。
すぐさまK戸がN浦に変わるように掴みかかって来た。
K戸はN浦ほどノロマではなかったが、やはり大したヤツではなかった。
お互いに手を出し合ったが、僕が数発殴ると後ろに転がっていった。
すると大柄なK内が横から掴みに来て、それを払おうとまた掴み合い。
N浦も入り、K戸が起き上がって来て、一時的にだが3対1になった。
そのときにH山が、
「やめとけや!あの2人とhideの喧嘩やろ!」
と横からK内をさえぎってくれた。
そしてH山とK内がにらみ合いになり、グループの他の者もH山に、
「何やお前!関係ないのに入って来んな!」
と言い合いになった。
周りで見ていた者の中からも、
「そやな」
「あいつらの喧嘩やからな」
「2対1でもアカンのに、それ以上他のヤツが手ぇ出したらアカンやろ」
など、野次というほど大声ではないがぼそぼそと口々に言う声が聞こえた。
思わぬ援軍と応援に力が湧いた。

そして2人と揉み合いになったが、K戸を蹴散らし、N浦をぶん殴って膝蹴りを喰らわせた。
そのとき、いつの間にか棒を持っていたK戸が打ちかかって来た。
僕はそれを避けようとして尻餅をつきそうになったが、辛うじて踏ん張り、相手の手元を掴んで棒を取り上げた。
どうやって取ったんだろう?と後で思うほどあっさり取り上げて、その一瞬目が合ったH山の方に放った。
H山はそれを連中の手の届かないように後方へ投げ捨てた。
棒を取り上げた直後、さらに向かってくるK戸に、僕は完全にキレて大声で吠えた。
自分でも何と怒鳴ったか憶えていない。
勢いに乗じてK戸をぼこぼこに殴った。
そしてそのとき、いきなり誰かに後ろから襟を掴まれ、思い切り引っ張られた。

S中だった。

僕はまるで投げられたように後方にだだだーっと飛ばされ、机や椅子を蹴散らしながらバランスを立て直そうとし、何メートルも離れたあたりでようやく転がらずに止まった。
即座に振り返り僕を引っ張ったヤツを見て、S中だと判った。
「おおお~っ!!」
という声が教室中から上がった。
S中に対する声だったのか、僕に対する声だったのか、わからない。
S中は、
「とことんやるつもりならやったるわ!学校終わってから続きをやろうや!」
とわめいた。
わけわからん。僕が売った喧嘩ではない。
頭に来て、僕はそのままS中の方に向かって行こうとした。
すると視界の隅から誰かが僕の方へ走って来た。
U田だ。
「凄い!お前みたいなヤツ好きや!迫力あるやんけ!」
と讃えながら、僕の腕を引っ張った。
「?」
僕は残ろうとしたが、
「行こうぜ、行こうぜ!!」
と、ぐいぐい引っ張った。
つられて僕はU田とそのまま扉の方へ行き、教室を後にした。
自分のクラスに戻って、僕を席に座らせるとU田は、
「もうこれくらいにしとけ」
というようなことを言って、隣の教室に戻って行った。
U田は同じクラスだが、何か言いに行ってくれたのかも知れない。
まるで鳶が油揚げをかっさらうように、絶妙のタイミングで僕を連れ出し、その場を鎮めた。
U田とは普段あまり会話することは無く、親しいわけではなかったが、どういうわけかこのときばかりは突然、味方してくれた。
しかしS中グループの連中が、それで収まるものかどうか…。

その間、教室が騒がしいというので、職員室から先生が来て注意していたらしい。
そしてこっちのクラスにも来た。
S中も戻って来て、僕の後ろの席に着いていた。
何だかんだの内に5時限目の終業ベル。

そして6時限目。
マイッタ…。腕が上がらない。。
2人との掴み合い、殴り合い、K内やS中とも争って、ペンを持とうとしても持てないほど腕の筋肉が疲労していた。
太股はガクガク、腕はブルブル。力が入らなくなっていた。
これでは、あとでS中グループの人数相手に立ち回るどころか、N浦やK戸程度のヤツでも、1人を相手するのも難しい。
それに、一度はグループ相手に学校外でやり合うのを免れたかと思っていたが、結局そうもいかなくなりかけている。
しかも腕がこんなだ…。どうしようか…。

まぁ、どうでもいい気もしていたので、多人数相手に暴れてやろうかとも考えた。
結果、大怪我することになるかも知れない。
場合によっては死んでしまうかも。
しかし、やられることが判っているのに玉砕覚悟というのもアホらしく思えた。
せめて時間稼ぎができれば…という思いで、6時限目の終業ベルが鳴ったとき、振り向いて後ろの席のS中を見た。
「なぁS中」
「?」
「もうやめにせえへんか?」

S中は意外な反応を見せた。
こわばった表情はみるみる柔らかくなってほっとした顔に変わり、
「…そうか。それでええんやな?」
と言った。
(なんだ、コイツもやりたくなかったんだな)
と思って、
「別にオレが仕掛けた喧嘩とちゃうぞ。ヨロシク収めてくれよ」
と言うと、心持ちにこやかな表情で、
「わかった」
と、教室を出ていった。
この日の喧嘩はそれで終わった。

続きがあるのだが、今回はいつもにも増して長くなってしまったので、ここで一旦置くことにする。

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